2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
兄の禅師《ぜんじ》だけは稀《まれ》に 山から京へ出た時に訪《たず》ねて来るが、 その人も昔風な人で、同じ僧といっても生活する能力が全然ない、 脱俗したとほめて言えば言えるような男であったから、 庭の雑草を払わせればきれいになるものとも気がつか…
手道具なども昔の品の使い慣らしたりっぱな物のあるのを、 生《なま》物識りの骨董《こっとう》好きの人が、 だれに製作させた物、某の傑作があると聞いて、譲り受けたいと、 想像のできる貧乏さを軽蔑して申し込んでくるのを、 例のように女房たちは、 「し…
まだ少しばかり残っている女房は、 「これではしようがございません。 近ごろは地方官などがよい邸を自慢に造りますが、 こちらのお庭の木などに目をつけて、 お売りになりませんかなどと近所の者から言わせてまいりますが、 そうあそばして、 こんな怖しい…
よかった時代に昔から縁故のある女房は はじめてここに皆居つくことにもなって、 数が多くなっていたのも、 またちりぢりにほかへ行ってしまった。 そしてまた老衰して死ぬ女もあって、 月日とともに上から下まで召使の数が少なくなっていく。 もとから荒廃…