「野蛮な地方に長くいたのだから、
気の毒なものに仕上げられているだろうと私は軽蔑していたが、
こちらがかえって恥ずかしくなるほどでしたよ。
娘にこうした麗人を持っているということを
世間へ知らせるようにして、
よくおいでになる兵部卿《ひょうぶきょう》の宮などに
懊悩《おうのう》をおさせするのだね。
恋愛至上主義者も私の家《うち》では
きまじめな方面しか見せないのも妙齢の娘などがないからなのだ。
たいそうにかしずいてみせよう、
まだ成っていない貴公子たちの懸想《けそう》ぶりを
たんと拝見しよう」
と源氏が言うと、
「変な親心ね。求婚者の競争をあおるなどとはひどい方」
と女王《にょおう》は言う。
「そうだった、
あなたを今のような私の心だったらそう取り扱うのだった。
無分別に妻などにはしないで、娘にしておくのだった」
夫人の顔を赤らめたのがいかにも若々しく見えた。
源氏は硯《すずり》を手もとへ引き寄せながら、
無駄《むだ》書きのように書いていた。
『恋ひわたる身はそれながら玉鬘《たまかづら》いかなる筋を尋ね来つらん』
「かわいそうに」
とも独言《ひとりごと》しているのを見て、
玉鬘の母であった人は、前に源氏の言ったとおりに、
深く愛していた人らしいと女王は思った。
🌷🎼#Wind of Travelers written by #のる
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