喪服の鈍《にび》色ではあるが
濃淡の重なりの艶《えん》な源氏の姿が
雪の光《あかり》でよく見えるのを、
寝ながらのぞいていた夫人はこの姿を見ることも
稀《まれ》な日になったらと思うと悲しかった。
前駆も親しい者ばかりを選んであったが、
「参内する以外の外出はおっくうになった。
桃園の女五《にょご》の宮様は寂しいお一人ぼっちなのだからね、
式部卿の宮がおいでになった間は私もお任せしてしまっていたが、
今では私がたよりだとおっしゃるのでね、
それもごもっともでお気の毒だから」
などと、
前駆を勤める人たちにも言いわけらしく源氏は言っていたが、
「りっぱな方だけれど、恋愛をおやめにならない点が傷だね。
御家庭がそれで済むまいと心配だ」
とそうした人たちも言っていた。
🪷🎼雨の風景 written by ゆうり
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷