免れがたい因縁に引かれて
いよいよそこを去る時になったのであると思うと、
女の心は馴染《なじみ》深い明石の浦に
名残《なごり》が惜しまれた。
父の入道を一人ぼっちで残すことも苦痛であった。
なぜ自分だけはこんな悲しみを
しなければならないのであろうと、
朗らかな運命を持つ人がうらやましかった。
両親も源氏に迎えられて
娘が出京するというようなことは
長い間寝てもさめても願っていたことで、
それが実現される喜びはあっても、
その日を限りに娘たちと別れて孤独になる将来を考えると
堪えがたく悲しくて、
夜も昼も物思いに入道は呆《ぼう》としていた。
言うことはいつも同じことで、
「そして私は姫君の顔を見ないでいるのだね」
そればかりである。
夫人の心も非常に悲しかった。
🪷黄昏と水平線🪷
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