物思いは御息所の病をますます昂《こう》じさせた。
斎宮をはばかって、
他の家へ行って修法などをさせていた。
源氏はそれを聞いてどんなふうに悪いのかと
哀れに思って訪ねて行った。
自邸でない人の家であったから、
人目を避けてこの人たちは逢った。
本意ではなくて長く逢いに来なかったことを
御息所の気も済むほどこまごまと源氏は語っていた。
妻の病状も心配げに話すのである。
「私はそれほど心配しているのではないのですが、
親たちがたいへんな騒ぎ方をしていますから、
気の毒で、少し容体がよくなるまでは
謹慎を表していようと思うだけなのです。
あなたが心を大きく持って見ていてくだすったら私は幸福です」
などと言う。
女に平生よりも弱々しいふうの見えるのを、
もっともなことに思って源氏は同情していた。
疑いも恨みも氷解したわけでもなく
源氏が帰って行く朝の姿の美しいのを見て、
自分はとうていこの人を離れて行きうるものではないと
御息所は思った。
正夫人である上に子供が生まれるとなれば、
その人以外の女性に持っている愛などは
さめて淡《うす》いものになっていくであろう時、
今のように毎日待ち暮らすことも、
その辛抱《しんぼう》に命の続かなくなることであろうと、
それでいてまた思われもして、
たまたま逢って物思いの決して少なくはならない御息所へ、
次の日は手紙だけが暮れてから送られた。
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