入道は愛馬を持っていた。
相模国の住人、大庭《おおばの》三郎|景親《かげちか》が
関東八カ国随一の馬として献上したもので、黒い毛並だが額が少し白い、
そこで望月《もちづき》と呼ばれた名馬である。
清盛はそれが気に入って第一の厩《うまや》に入れ、
馬番を多数つけて大切にしていたが、
一夜のうちに鼠が望月の尾に巣をつくり子を生んだ。
これはただごとではない、と占わせると、
「重き御慎《おんつつし》み」
と出た。さすがの清盛も所有する気になれず、
陰陽師《おんようし》の安倍泰親に与えてしまったが、
鼠が一夜に巣をつくるのは昔にもあった。
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