あるかないかのようになって寝ているのは
痛々しく可憐《かれん》であった。
少しの乱れもなくはらはらと枕にかかった髪の美しさは
男の魂を奪うだけの魅力があった。
なぜ自分は長い間この人を
飽き足らない感情を持って見ていたのであろうかと、
不思議なほど長くじっと源氏は妻を見つめていた。
「院の御所などへ伺って、早く帰って来ましょう。
こんなふうにして
始終逢うことができればうれしいでしょうが、
宮様がじっと付いていらっしゃるから、
ぶしつけにならないかと思って 御遠慮しながら蔭で
煩悶《はんもん》をしていた私にも同情ができるでしょう。
だから自分でも早くよくなろうと努めるようにしてね、
これまでのように
私たちでいっしょにいられるようになってください。
あまりお母様にあなたが甘えるものだから、
あちらでもいつまでも子供のようにお扱いになるのですよ」
などと言い置いてきれいに装束した源氏の出かけるのを
病床の夫人は平生よりも熱心にながめていた。
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