僧の言ったとおりに参詣者の一団が町へはいって来た。
これも徒歩で来たものらしい。
主人らしいのは二人の女で召使の男女の数は多かった。
馬も四、五匹引かせている。
目だたぬようにしているが、
きれいな顔をした侍などもついていた。
主人の僧は先客があっても
その上にどうかしてこの連中を泊めようとして、
道に出て頭を掻《か》きながら、
ひょこひょこと追従《ついしょう》をしていた。
かわいそうな気はしたが、
また宿を変えるのも見苦しいことであるし、
面倒《めんどう》でもあったから、
ある人々は奥のほうへはいり、
残りの人々はまた見えない部屋のほうへやったりなどして、
姫君と女房たちとだけはもとの部屋の片すみのほうへ寄って、
幕のようなもので座敷の仕切りをして済ませていた。
あとの客も無作法な人たちではなかった。
遠慮深く静かで、双方ともつつましい相い客になっていた。
このあとから来た女というのは、
姫君を片時も忘れずに恋しがっている右近であった。
年月がたつにしたがって、
いつまでも続けている女房勤めも気がさすように思われて、
煩悶《はんもん》のある心の慰めに、
この寺へたびたび詣《まい》っているのである。
長い間の経験で
徒歩の旅を大儀とも何とも思っているのではなかったが、
さすがに足はくたびれて横になっていた。
🌸🎼ある春の日に…(One spring day...) written by 蒲鉾さちこ
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