雑用をする僧は願文《がんもん》のことなどもよく心得ていて、
すばやくいろいろのことを済ませていく。
「いつもの藤原瑠璃君《ふじわらのるりぎみ》という方のために
経をあげてよくお祈りすると書いてください。
その方にね、近ごろお目にかかることができましたからね。
その願果たしもさせていただきます」
と右近の命じていることも九州の人々を感動させた。
「それは結構なことでしたね。
よくこちらでお祈りしているせいでしょう」
などとその僧は言っていた。
御堂の騒ぎは夜通し続いていた。
夜が明けたので右近は知った僧の坊へ姫君を伴って行った。
静かに話したいと思うからであろう。
質素なふうで来ているのを恥ずかしがっている姫君を
右近は美しいと思った。
「私は思いがけない大きなお邸《やしき》へ
お勤めすることになりまして、たくさんな女の方を見ましたが、
殿様の奥様の御容貌《ごきりょう》に比べてよいほどの方は
ないと長い間思っていました。
それにお小さいお姫様が
またお美しいことはもっともなことですが、
そのお姫様はまたどんなに大事がられていらっしゃるか、
まったく幸福そのもののような方ですがね、
こうして御質素なふうをなすっていらっしゃる姫君を、
私は拝見して、
その奥様や二条院のお姫様に姫君が劣っていらっしゃるように
思われませんのでうれしゅうございます。
🌺🎼#去りゆく冬を謳う written by #小林樹
少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋🪷も ぜひご覧ください🌟https://syounagon.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷
- 価格: 3037000 円
- 楽天で詳細を見る