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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【源氏物語712 第22帖 玉鬘12〈たまかずら〉】姫君は母の顔を覚えていない。こうした苦難に身を置いて、いっそう親というものの恋しさが感ぜられるのであった。ようやく椿市《つばいち》という所着いた。

姫君は母の顔を覚えていなかった。

ただ漠然《ばくぜん》と親というものの面影を

今日《きょう》まで心に作って来ているだけであったが、

こうした苦難に身を置いては、

いっそう親というものの恋しさが切実に感ぜられるのであった。

ようやく椿市《つばいち》という所へ、

京を出て四日めの昼前に、生きている気もしないで着いた。

姫君は歩行らしい歩行もできずに、

しかもいろいろな方法で足を運ばせて来たが、

もう足の裏が腫《は》れて動かせない状態になって

椿市で休息をしたのである。

頼みにされている豊後介と、弓矢を持った郎党が二人、

そのほかは僕《しもべ》と子供侍が三、四人、

姫君の付き添いの女房は全部で三人、

これは髪の上から上着を着た壺装束《つぼしょうぞく》をしていた。

それから下女が二人、これが一行で、

派手《はで》な長谷詣りの一行ではなかった。

寺へ燈明料を納めたりすることを

ここで頼んだりしているうちに日暮れ時になった。

この家の主人《あるじ》である僧が向こうで言っている。

「私には今夜泊めようと思っているお客があったのだのに、

 だれを勝手に泊めてしまったのだ、物知らずの女どもめ、

 相談なしに何をしたのだ」

 怒《おこ》っているのである。

九州の一行は残念な気持ちでこれを聞いていたが、

僧の言ったとおりに参詣者の一団が町へはいって来た。

🪷🎼花散ル風 written by 蒲鉾さちこ 

 

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