もう一歩で暗い世界へお沈めしてしまうところでしたよ。
惜しくてもったいなくて、
家も財産も捨てて頼りにしてよい息子にも娘にも別れて、
今ではかえって知らぬ他国のような心細い気のする京へ
帰って来たのですよ。
あなた、どうぞいい智慧《ちえ》を出してくだすって、
姫君の御運を開いてあげてくださいまし。
貴族のお家に仕えておいでになる方は、
便宜がたくさんあるでしょう。
お父様の大臣が姫君をお認めくださいますように
計らってくださいまし」
とおとどは言うのであった。
姫君は恥ずかしく思って後ろを向いていた。
「それがね、私はつまらない者ですけれど、
殿様がおそばで使っていてくださいますからね、
昔のいろいろな話を申し上げる中で、
どうなさいましたろうと私が姫君のことをよく申すものですから、
殿様が、ぜひ自分の所へ引き取りたく思う。
居所を聞き込んだら知らせるがいいとおっしゃるのですよ」
「源氏の大臣様はどんなにおりっぱな方でも、
今のお話のようなよい奥様や、
そのほかの奥様も幾人《いくたり》かいらっしゃるのでしょう。
それよりもほんとうのお父様の大臣へお知らせする方法を
考えてください」
とおとどが言うのを聞いて、右近ははじめて夕顔夫人を愛して、
死の床に泣いた人の源氏であったことを話した。
🪻🎼#千歳の如く written by #すもち
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