殿様はおっしゃいますのですよ、
自分の父君の帝《みかど》様の時から
宮中の女御《にょご》やお后《きさき》、
それから以下の女性は無数に見ているが、
ただ今の帝様のお母様のお后の御美貌と自分の娘の顔とが
最もすぐれたもので、
美人とはこれを言うのであると思われるって。
私は拝見していて、そのお后様は存じませんけれど、
お姫様はまだお小さくて将来は必ずすぐれた美人に
おなりになるでしょうが、
奥様の御美貌に並ぶ人はないと思うのですよ。
殿様も奥様のお美しさの価値を
十分ご存じでいらっしゃるでしょうが、
御自分のお口から最上の美人の数へ
お入れにはなりにくいのですよ。
こんなこともお言いになることがあるのですよ、
あなたは私と夫婦になれたりしてもったいなく思いませんか
などと戯談《じょうだん》をね。
お二人のそろいもそろったお美しさを拝見しているだけで
命も延びる気がするのですよ。
あんな方はあるものでもありません、
私がそんなに思う六条院の奥様に
どこ一つ姫君は劣っていらっしゃいません。
物は限りがあってすぐれた美貌と申しても
円光を後ろに負っていらっしゃるわけではありませんけれど、
これがほんとうに美しいお顔と申し上げていいのでございましょう」
右近は微笑《ほほえ》んで姫君をながめていた。
少弐《しょうに》の未亡人もうれしそうである。
🌸🎼#桜ひらり written by #すもち
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