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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

若紫を二条院に迎える【源氏90 第六帖 末摘花10】若い公達は行幸の日を楽しみに舞曲の勉強をしている。源氏も含め皆 稽古に忙しい。若紫を二条院に迎えた。

 

夜になってから退出する左大臣に伴われて源氏はその家へ行った。

行幸の日を楽しみにして、

若い公達《きんだち》が集まるとその話が出る。

舞曲の勉強をするのが仕事のようになっていたころであったから、

どこの家でも楽器の音をさせているのである。

 

左大臣の子息たちも、

平生の楽器のほかの大篳篥《おおひちりき》、

尺八などの、大きいものから太い声をたてる物も混ぜて、

大がかりの合奏の稽古《けいこ》をしていた。

太鼓までも高欄の所へころがしてきて、

そうした役はせぬことになっている公達が

自身でたたいたりもしていた。

こんなことで源氏も毎日|閑暇《ひま》がない。

心から恋しい人の所へ行く時間を盗むことはできても、

常陸の宮へ行ってよい時間はなくて九月が終わってしまった。

 

それでいよいよ行幸の日が近づいて来たわけで、

試楽とか何とか大騒ぎするころに命婦《みょうぶ》は宮中へ出仕した。

「どうしているだろう」

源氏は不幸な相手をあわれむ心を顔に見せていた。

大輔《たゆう》の命婦はいろいろと近ごろの様子を話した。

 

「あまりに御冷淡です。

 その方でなくても見ているものがこれではたまりません」

泣き出しそうにまでなっていた。

悪い感じも源氏にとめさせないで、

きれいに結末をつけようと願っていた

この女の意志も尊重しなかったことで、

どんなに恨んでいるだろうとさえ源氏は思った。

またあの人自身は例の無口なままで物思いを続けていることであろうと

想像されてかわいそうであった。

 

「とても忙しいのだよ。恨むのは無理だ」

歎息《たんそく》をして、それから、

「こちらがどう思っても感受性の乏しい人だからね。懲らそうとも思って」

こう言って源氏は微笑を見せた。

若い美しいこの源氏の顔を見ていると、

命婦も自身までが笑顔《えがお》になっていく気がした。

だれからも恋の恨みを負わされる青春を持っていらっしゃるのだ、

女に同情が薄くて我儘《わがまま》をするのも道理なのだと思った。

 

この行幸準備の用が少なくなってから時々源氏は常陸の宮へ通った。

そのうち若紫を二条の院へ迎えたのであったから、

源氏は小女王を愛することに没頭していて、

六条の貴女に逢うことも少なくなっていた。

人の所へ通って行くことは始終心にかけながらも おっくうにばかり思えた。

【源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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