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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

清貧の常陸宮家の生活【源氏91 第六帖 末摘花11】 古ぼけた几帳や支那製であるが古ぼけた食器。女房達は ぼやきながら 古めかしい姿で寒さに震えている。

常陸の女王のまだ顔も見せない深い羞恥を

取りのけてみようとも格別しないで時がたった。

あるいは源氏がこの人を顕《あら》わに見た刹那《せつな》から

好きになる可能性があるとも言えるのである。

手探りに不審な点があるのか、

この人の顔を一度だけ見たいと思うこともあったが、

引っ込みのつかぬ幻滅を味わわされることも思うと不安だった。

だれも人の来ることを思わない、

まだ深夜にならぬ時刻に源氏はそっと行って、

格子の間からのぞいて見た。

けれど姫君はそんな所から見えるものでもなかった。

几帳《きちょう》などは非常に古びた物であるが、

昔作られたままに皆きちんとかかっていた。

 

どこからか隙見《すきみ》ができるかと

源氏は縁側をあちこちと歩いたが、

隅《すみ》の部屋にだけいる人が見えた。

四、五人の女房である。

食事台、食器、これらは支那《しな》製のものであるが、

古くきたなくなって見る影もない。

女王の部屋から下げたそんなものを置いて、

晩の食事をこの人たちはしているのである。

皆寒そうであった。

 

白い服の何ともいえないほど煤《すす》けてきたなくなった物の上に、

堅気《かたぎ》らしく裳の形をした物を 後ろにくくりつけている。

しかも古風に髪を櫛で後ろへ押えた額のかっこうなどを見ると、

内教坊《ないきょうぼう》や

(宮中の神前奉仕の女房が音楽の練習をしている所)

内侍所《ないしどころ》では

こんなかっこうをした者がいると思えて源氏はおかしかった。

こんなふうを人間に仕える女房もしているものとは

これまで源氏は知らなんだ。

「まあ寒い年。長生きをしているとこんな冬にも逢いますよ」

そう言って泣く者もある。

「宮様がおいでになった時代に、

 なぜ私は心細いお家《うち》だなどと思ったのだろう。

 その時よりもまたどれだけひどくなったかもしれないのに、

 やっぱり私らは我慢して御奉公している」  

その女は両|袖《そで》をばたばたといわせて、

今にも空中へ飛び上がってしまうように慄《ふる》えている。

生活についての剥《む》き出しな、

きまりの悪くなるような話ばかりするので、

聞いていて恥ずかしくなった源氏は、

そこから退《の》いて、今来たように格子をたたいたのであった。

「さあ、さあ」

などと言って、灯《ひ》を明るくして、

格子を上げて源氏を迎えた。

侍従は一方で斎院《さいいん》の女房を勤めていたから

このごろは来ていないのである。

それがいないのでいっそうすべての調子が野暮《やぼ》らしかった。

【源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、若紫と兄妹のように戯れるのだった。

 

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