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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【源氏物語786 第25帖 蛍11】「姫君の前でこうした男女関係の書かれた小説は読んで聞かせないように。恋をし始めた娘が悪いわけではないが、それを普通のことのように思ってしまわれるのが危険ですからね」


 玉鬘は襟《えり》の中へ顔を引き入れるようにして言う。

「小説におさせにならないでも、

こんな奇怪なことは話になって世間へ広まります」

「珍しいことだというのですか。

そうです。私の心は珍しいことにときめく」

 ひたひたと寄り添ってこんな戯れを源氏は言うのである。

 

「思ひ余り昔のあとを尋ぬれど親にそむける子ぞ類《たぐ》ひなき

 

 不孝は仏の道でも非常に悪いことにして説かれています」

 と源氏が言っても、玉鬘は顔を上げようともしなかった。

源氏は女の髪をなでながら恨み言を言った。やっと玉鬘は、

 

古き跡を尋ぬれどげになかりけりこの世にかかる親の心は

 

 こう言った。

源氏は気恥ずかしい気がしてそれ以上の手出しはできなかった。

どうこの二人はなっていくのであろう。

 紫夫人も姫君に託してやはり物語を集める一人であった。

「こま物語」の絵になっているのを手に取って、

「上手《じょうず》にできた画《え》だこと」

 と言いながら夫人は見ていた。

小さい姫君が無邪気なふうで昼寝をしているのが

昔の自分のような気がするのであった。

「こんな子供どうしでも悪い関係がすぐにできるじゃありませんか。

昔を言えば私などは模範にしてよいまれな物堅さだった」

 と源氏は夫人に言った。

そのかわりにまれなことも好きであったはずである。

「姫君の前でこうした男女関係の書かれた小説は

読んで聞かせないようにするほうがいい。

恋をし始めた娘などというものが、悪いわけではないが、

世間にはこんなことがあるのだと、

それを普通のことのように思ってしまわれるのが危険ですからね」

 こんな周到な注意が実子の姫君には払われているのを、

対の姫君が聞いたら恨むかもしれない。

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