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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語28 第2巻 西光被斬③〈さいこうがきられ〉〜The Tale of the Heike🪷


翌くる六月一日の未明、清盛は、

検非違使安倍資成《けびいしあべのすけなり》を召し、

院の御所への使いを命じた。

資成は御所に着くと、

大膳大夫信業《だいぜんのだいふのぶなり》を呼んで清盛の伝言を、

法皇に伝えてくれるように頼んだ。

「わが君の仰有《おっしゃ》るには、

 法皇側近の方々が、

 平家一門を滅して天下を乱そうという計画をお持ちとききました。

 こちらとしても捨てては置かれませんから、

 一人一人召し捕え、いい様に処分するつもりでいますが、

 その点あらかじめご了承下さって、

 何卒ご妨害などしないで頂きたいのです」

信業もこの知らせにひどく、どぎまぎしながら、

「暫くお待ちを、唯今、法皇にお取次ぎいたしますから」

と言い置いてあたふたと、院の前にかけつけてきた。

「どうやら、鹿ヶ谷の一件を、清盛が嗅ぎつけたらしく」

信業の知らせに、

日頃、沈着な院も、返す言葉がない。

唯、唇をわなわな震わせて、

「一体 如何《どう》したものであろう、

 のう信業、どうしたらよかろう」

と、咄嗟《とっさ》の分別もつかずに、まごまごしておられる。

信業だって、良い思案の浮ぶ筈もなく、

それでも頭の利く男なら、何とかこの場は取り繕って、

玄関に待たせっきりの資成に色よい返事を送って

一応帰してしまえばいいものを、

普段、のんびりと、公卿達との交渉ばかりで、

こういう緊急事態に直面した事がないから、

一緒になって、

「如何いたしましょう、如何取り計いましょう」

と、さっきから同じ事ばかりを繰り返している。

 

資成は、役目柄、

どうもはっきりした態度をとれないらしい法皇の立場に、

逸早く気づいたから、これで用事は済んだとばかり、

さっさと清盛の所に帰ってくると、

「何か、ひどく慌てふためいている様子で、

 ろくすっぽ返事をくれません」

と報告した。

「なる程、返事ができないわけだわい。

 行綱が申したことは、やはり真実であったか、

 やれやれ、あいつのおかげで、

 わしも生命拾いしたというわけか」

様子が判ってみれば、ぐずぐずしている間に、

知らせが方々へとぶかも知れない。

万事、早いに限ると、清盛は、

飛騨守景家《ひだのかみかげいえ》、

筑後守貞能《ちくごのかみさだよし》らに命じて、

即座に、謀叛を企てた者の逮捕を命じることにした。

 

清盛は、先ず、使いの者を、新大納言成親邸へ走らせ、

「ご相談があるので、是非お出で頂きたい」

と言わせた。

成親は、まさか謀叛がばれたとは思わないから、

「どうせ、山門攻めは見合すようにとか、

 何とか法皇に意見しろというんだろうが、

 とにかく、山門のことは、

 法皇も、てんで聞き分けがないから、難しいのになあ」

と呑気《のんき》な事を考えながら、車を走らせた。

もちろん、これが最後とは思い知るわけもなく、

いつもよりも、

一段と美々しく着飾った行列でやってきたのは、

虫の知らせであったろうか。

 

西八条の屋敷近くまでくると、

甲冑《かっちゅう》、物具《もののぐ》をつけた兵士達が、

満ち溢れて、どことなく緊迫した空気が漂っている。

 成親も、思わず胸騒ぎがするのを感じたが、

「まさか」と打消して、

急いで牛車から降り立った。

途端に、成親の囲りをぱらぱらっと、

荒武者どもが取り巻いた。

「しばるのでございますか?」

というと、

「まあいいだろう」

と答えたのは、誰あろう清盛入道である。

「かしこまりました」

と答えると侍共は、成親が一言もいうすきも与えず、

縁の上に、引ずりあげて、

とある一間に押しこめてしまった。

そうまでされても成親は、事の意外さに、

日頃の判断力も失って、

唯、呆然《ぼうぜん》とするばかりである。

🪷🎼Taiko Destruction written by MFP【Marron Fields Production】

 

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【源氏物語648 第21帖 乙女3】源氏の若君 夕霧が元服の式を挙げた。大変華やかな祝い事であったが、源氏は考えがあり夕霧は六位の浅葱の袍《ほう》を着せた。大宮は言語道断だとお嘆きになった。

第21帖 乙女3です🪻


故太政大臣家で生まれた源氏の若君の

元服の式を上げる用意がされていて、

源氏は二条の院で行なわせたく思うのであったが、

祖母の宮が御覧になりたく思召すのがもっともで、

そうしたことはお気の毒に思われて、

やはり今までお育てになった宮の御殿でその式をした。

右大将を始め伯父君《おじぎみ》たちが

皆りっぱな顕官になっていて勢力のある人たちであったから、

母方の親戚からの祝品その他の贈り物もおびただしかった。

かねてから京じゅうの騒ぎになるほど

華美な祝い事になったのである。

 

初めから四位にしようと源氏は思ってもいたことであったし、

世間もそう見ていたが、まだきわめて小さい子を、

何事も自分の意志のとおりになる時代にそんな取り計らいをするのは、

俗人のすることであるという気がしてきたので、

源氏は長男に四位を与えることはやめて、

六位の浅葱《あさぎ》の袍《ほう》を着せてしまった。

大宮《おおみや》が言語道断のことのようにこ

れをお歎きになったことはお道理でお気の毒に思われた。

源氏は宮に御面会をしてその問題でお話をした。

🪻🎼#凛 written by #Fukagawa

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【平家物語26 第2巻 西光被斬②〈さいこうがきられ〉】〜The Tale of the Heike🪷


額に汗をみなぎらせ、真蒼《まっさお》な顔に息使いも荒く、

西八条の邸に入ってきた行綱に、

家来達も驚いて、早速、清盛の所に知らせた。

「何、行綱だと? めったに来もしない奴が、

 又何でこんな夜中にやって来たんだ? 

 とにかくおそいから、わしは逢わん、

 盛国《もりくに》、お前が、言伝てを聞いてこい」

清盛は傍らの主馬判官《しゅめのはんがん》盛国にいった。

暫くして盛国が戻ってきて、

「何か、直《じ》きじき、お話したいとか」

「直きじきだと? 一体何だろう?」

 さすがに清盛も、行綱の唯ならぬ様子に、

何事か起ったのかと、不安になってきて、

自分で渡殿《わたどの》の中門まで出てきた。

「この夜更けに、一体、何の用で、わしに逢いたいのじゃ?」

「実は、昼のうちは人目につきやすく、

 中々その折もございませんで、

 夜中お騒せしてまことに心苦しいのですが、

 このところ、後白河院の御所で、兵具《ひょうぐ》を整え、

 軍兵《ぐんぴょう》を召集しているご様子はご存じでございますか?」

「ああ、あれか」

清盛は、人騒せな男だと思いながらのんびり答えた。

「あれは、何、叡山攻めの仕度じゃよ」

「それがそうでないのでございますよ」

行綱は、身近く清盛の側に寄ると小声で囁いた。

「実は、平家ご一門に関る事でございまして、

 れっきとした謀叛《むほん》の準備なので」

「えっ?」

 清盛も一瞬、さっと顔色を変えた。

今の今まで、

のんびりと行綱と話をしていた清盛とは人が違った様だった。

目がきっと坐り、眉がぴりぴりと動いた。

体が小きざみに震えて、今にも行綱にとびかかりそうである。

「院はご存知なのであろうか」

「もちろんでございますとも、第一、軍兵の召集は、

 院宣《いんぜん》ということでお集めになりましたもので、

 ご存知にならぬ筈はございません。

 いつぞや、鹿ヶ谷の山荘で、院もお出での席、

 こんな事もあったのでございますよ」

と陰謀の始めから終りまでを、

ある事ない事まぜこぜてしゃべりたてた。

清盛はまなじりをぴくぴくさせながら、

それでも最後まで聞いていたが、

「うん、わかった、ご苦労だった」

というが早いか、自ら、大声で、

侍達を呼び集めに奥に入っていった。

「既に火は放たれた」

火つけ役の行綱は、

任を果した安らかさと同時に

良心の呵責《かしゃく》も加わって、

別に追手などいるわけもないのに、はかまのもも立ちを高くとると、

そのまま外へ逃げ出し、家に帰ると、ひっそり小さくなっていた。

 清盛は、一族郎党をその夜の内に、

ひそかに西八条の邸に召集した。

寝耳に水の謀叛の知らせに、

人々はまだ、半分、耳を疑ってはいたが、

とにかく清盛のお召しなので、

右大将宗盛、知盛らの諸将も甲冑《かっちゅう》に弓矢という、

完全武装で集ってきた。

その数はおよそ六、七千騎であった。

🪷🎼#荊の庭 written by #稿屋 隆

 

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