google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語141 伊豆院宣④】後白河法皇の平家追討の院宣。頼朝は新しい烏帽子、浄衣をつけ身を浄めると、院宣を三度拝し封を開いた。流人の生活は、彼の心の中で、今終りを告げた。彼の眉宇に決意がながれた。

 やがて、院宣をしっかと首にかけた文覚は喜び勇んで伊豆へと下った。

旅程は三日である。

頼朝の前に現れた文覚は、首からはずした院宣を渡した。

さしも沈静な頼朝の顔にも血が上った。

実は頼朝は不安な日を送っていたのであった。

文覚の余計な奔走が藪蛇《やぶへび》となり、

この上重い咎なぞ受けてはかなわぬと思っていた。

また文覚のいう政治力も半心半疑であった。

ここ一週間というもの、文覚の福原での行動が気にかかりつづけていた、

どの様な結果がもたらされるか、それは頼朝にもまったくわからなかった。

だが、今彼の手にしているのは勅勘の許しであり、平家追討の院宣である。

手が震えていたのを文覚はじっと見ていた。

文覚が伊豆を後にしてから、彼の言葉のように丁度八日目の正午であった。

 頼朝は新しい烏帽子《えぼし》、浄衣《じょうえ》をつけ身を浄《きよ》めると、

院宣を三度拝してから封を開いた。

「近年、平氏王威を蔑し軽んじ、仏法を破滅し王法を乱さんと欲す。

それわが国は神国なり。宗廟相並んで、神徳これ新なり。

故に朝廷開基の後、数千余歳の間、帝位を傾け、国家をあやぶまんと欲するもの、

みな以て敗北せずということなし。

しかればすなわち、かつは神道の冥助《めいじょ》にまかせ、

かつは勅旨の旨趣《しいしゅ》を守って、早く平氏の一類を亡ぼして、

朝家《ちょうけ》の怨敵《おんてき》を退けよ。

譜代相伝《ふだいそうでん》の兵略を継ぎ、累祖《るいそ》奉公の忠勤をぬきんでて、

身を立てて家を興すべし。

すなわち院宣かくの如し。よって件《くだん》の如くお伝えする。

   治承四年七月十四日

   前右兵衛督光能承って謹上《きんじょう》

   前右兵衛佐殿へ」

 院宣を両三度読み終った頼朝は、大きく息を吐いた。

流人の生活は、彼の心の中で、今終りを告げたのである。

彼の眉宇《びう》に決意がながれた。

 頼朝はこの院宣を錦の袋に入れて身から離さなかった。

石橋山の合戦の折もこの錦袋と共に戦ったという。

 

🎼迷いの森

少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋🪷も ぜひご覧ください🌟https://syounagon.jimdosite.com