福原には、頼朝謀叛の兵を起す、との情報が絶え間なく流れこんでくる。
彼のもとに集る源氏の兵力もその数を刻々増してゆく情勢である。
公卿会議が急いで開かれ、敵の兵力が増さぬうちに一日も早く追手を、
という意見が一致して採られ、
大将軍に小松の権亮少将維盛《ごんのすけしょうしょうこれもり》、
副将軍に薩摩守忠度《さつまのかみただのり》が命じられ、
侍大将の上総守忠清《かずさのかみただきよ》が先陣ときまる。
その勢合せて三万余騎である。九月十八日が新都出発の日である。
大将軍の維盛は生年二十三、容姿端麗な青年であったが、
重代のきせなが唐革縅《からかわおどし》の鎧《よろい》をかつがせ、
自分は赤地の錦の直垂《ひたたれ》に萌黄匂《もえぎにおい》の鎧を着こみ、
金覆輪《きんぷくりん》の鞍置いた連銭葦毛《れんせんあしげ》に乗った姿は、
絵にも筆にも及び難しと人々は賞めそやした。
副将軍の薩摩守忠度は紺地の錦の直垂に、
黒糸縅の鎧、逞《たくま》しき黒馬に鋳懸地《いかけじ》の鞍置いて
打ちまたがった威風あたりを払う姿は、
都でも大層な見物という評判であった。
🎼🌼Alecto written by ハシマミ
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