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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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【源氏物語710 第22帖 玉鬘10〈たまかずら〉】「私などのことは何でもありません‥姫君をああした野蛮な連中に取られてしまえば、 精神的に死んでしまったのも同然ですよ」と豊後介は慰めるのであった。

九条に昔知っていた人の残っていたのを捜し出して、

九州の人たちは足どまりにした。

ここは京の中ではあるが

はかばかしい人の住んでいる所でもない町である。

外で働く女や商人の多い町の中で、

悲しい心を抱いて暮らしていたが、

秋になるといっそう物事が身に沁んで思われて過去からも、

未来からも暗い影ばかりが投げられる気がした。

信頼されている豊後介も、

京では水鳥が陸へ上がったようなもので、

職を求める手蔓《てづる》も知らないのであった。

今さら肥前へ帰るのも恥ずかしくてできないことであった。

思慮の足りなかったことを豊後介は後悔するばかりであるが、

つれて来た郎党も何かの口実を作って一人去り二人去り、

九州へ逃げて帰る者ばかりであった。

無力な失職者になっている長男に同情したようなことを

母のおとどが言うと、

「私などのことは何でもありません。

姫君を護《まも》っていることができれば、

自分の郎党などは一人もなくなって もいいのですよ。

 どんなに自分らが強力な豪族になったっても、

 姫君をああした野蛮な連中に取られてしまえば、

 精神的に死んでしまったのも同然ですよ」

と豊後介は慰めるのであった。

💐🎼緑の渓流 written by 天野七祈 

 

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