源氏も参内して陪観したが、
五節の舞い姫の少女が目にとまった昔を思い出した。
辰の日の夕方に大弐《だいに》の五節へ源氏は手紙を書いた。
内容が想像されないでもない。
少女子《をとめご》も さびぬらし 天つ袖
ふるき世の友 よはひ経ぬれば
五節は今日までの年月の長さを思って、
物哀れになった心持ちを源氏が
昔の自分に書いて告げただけのことである、
これだけのことを
喜びにしなければならない自分であるということをはかなんだ。
かけて言はば 今日のこととぞ 思ほゆる
日かげの霜の 袖にとけしも
新嘗祭《にいなめまつり》の
小忌《おみ》の青摺《あおず》りを模様にした、
この場合にふさわしい紙に、
濃淡の混ぜようをおもしろく見せた漢字がちの手紙も、
その階級の女には適した感じのよい返事の手紙であった。
若君も特に目だった美しい自家の五節を舞の庭に見て、
逢ってものを言う機会を作りたく、
楽屋のあたりへ行ってみるのであったが、
近い所へ人も寄せないような警戒ぶりであったから、
羞恥《しゅうち》心の多い年ごろのこの人は
歎息《たんそく》するばかりで、
それきりにしてしまった。
美貌《びぼう》であったことが忘られなくて、
恨めしい人に逢われない心の慰めには
あの人を恋人に得たいと思っていた。
🌺🎼朝露 written by のる
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