google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語91 第4巻 競①〈きおう〉】三位入道の嫡子 伊豆守仲綱《いずのかみなかつな》は木《こ》の下《した》と名づけられた鹿毛《かげ》の名馬を持っていた。これを知って欲しがったのが宗盛である。

高倉宮が法輪院で休まれている頃、

京の街は宮の謀叛《むほん》の噂でもちきっていた。

戦乱はもはや免れまい、

あわてて逃げ仕度にかかる者さえいた。

と共に一体何が宮を

謀叛に走らせたのかというせんさくが囁き交された。

黒幕とも目される源三位頼政の名が、

人々の口に上ったのもこの時である。

高倉宮謀叛の知らせは京都に大きな衝撃を与えた。

騒動はいつ終るとも知れなかった。

 宮を打倒平家へ走らせた源三位入道頼政は、

どんな動機を持っていたのだろうか、

今迄都にあって誰と衝突するでもなく穏かに過して来た侍である。

何故、今年になって急に平家滅亡を心に誓ったのか。

 つらつら案ずるに、これは入道頼政が、

勝手気ままな仕打を続けてきた

平家の次男宗盛を憎んだためと思われる。

 三位入道の嫡子 伊豆守仲綱《いずのかみなかつな》は

木《こ》の下《した》と名づけられた

鹿毛《かげ》の名馬を持っていた。

宮中にまでその名が知られた逸物で、

乗り心地といい、走り具合といい抜群の鹿毛で、

恐らく世に二匹はいまいといわれたほどである。

これを知って欲しがったのが宗盛である。

早速、仲綱のところへ使者が立てられた。

「世に聞えた名馬「木の下」を所望いたしたいが」

という。

仲綱は使者に答えた。

「お名指しの馬は確かに所有しておりましたが、

近頃あまり乗りつかれさせたので、

しばらく休ませようと田舎に送っている次第です」

 使者の報告を受けた宗盛は、

それでは仕方ないとあきらめた。

ところが、平家の侍どもは口々に宗盛に告げた。

「あの馬なら一昨日《おととい》も昨日も私は見ております。

現に今朝も庭で調教しているのをこの目でしかと見ました」

怒ったのは宗盛である。

何というけちな奴、惜しい余りに嘘をつきおったな、

それならそれで、こちらも断じて貰いうけてやる、

とばかりに使者を再び立てての矢の催促である。

断わられても引き下がる男ではない。

二度三度が、七度八度となって仲綱をせめ立てた。

これを耳にした三位入道頼政は息子を呼んでいい聞かせた。

「たとえ黄金《こがね》作りの馬であっても、

 人がそれほど欲しがるのを、断わるのはよろしくない。

 侍たるものが物惜しみすると人にいわれてはならぬ。

 馬はやるがよい」

父に説かれて愛馬を手離す気にはなったものの、

いざとなるとその決心もにぶりがちである。

漸く一首の歌を記して、馬とともに宗盛の所へおくった。

歌にいう。

こいしくば来ても見よかし身に添うる

  かげをばいかが放ちやるべき

もちろん宗盛は返歌などという礼儀は守らなかった。

もっぱら愛憎二つながらまじる目つきで

「木の下」をねめ廻していた。

🐴🎼The Lampe written by Addpico

少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷 https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷