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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語89 第4巻 信連合戦④〈のぶつらかっせん〉】この信連、甲冑を身につけ 鍛えあげた太刀を持てば、押し寄せた役人どもを一人でも無事に帰してはおらぬ。宮の行方をお尋ねのようじゃが、拙者知り申さぬ。

🙇信連を信達と間違えておりました。申し訳ありませぬ🙇

ただちに御所内に乱入した役人は

血眼で高倉宮の姿を探しもとめたが、

もちろん、いるはずはない。

地団駄ふんだ彼らは、

隠れひそんでいた女房たちに悪態の限りをつくしたあと、

信連を縛りあげて、六波羅へ引き揚げたのであった。

報告を受けた宗盛は大床を踏み鳴らして現れると、

庭先に引き据えられた信連を見すえて、わめいた。

「おのれは、宣旨の使いと名乗る男を、

 何が宣旨じゃと申して斬ったとな。

 嘘とはいわせぬ。

 そのうえ、検非違使庁の多くの下郎もあやめた。

 断じて許さぬ。

 よい、河原に引き出して、

 その素っ首を打ち落してやる。

 が、その前に宮の行方をかくさず申し立てい、

 おのれは承知しているはずだ。

 こやつをきびしく糺問《きゅうもん》してみよ」

信連は不敵な表情で坐り直すと、あざ笑った。

「近頃、御所の廻りを

 妙な奴輩《やから》がうろつくのは存じておった。

 大したこともあるまいと、

 今夜も馬鹿にしておったのは拙者の間違いであったが、

 どうも大層なことをやるご仁たちじゃ。

 物音がするので出てみれば、

 鎧武者《よろいむしゃ》が三百騎、

 余程あの御所が恐いとみえる。

 何用じゃと尋ねると、

 宣旨のお使いだという返事じゃが、

 昨今はあちこちで、

 窃盗、強盗、山賊、海賊など性の悪い奴らが、

 公卿がお出でになったとか、

 おれたちは宣旨のお使いであるなど称して

 悪事を働いていることは、

 拙者よく耳にしているのじゃ。

 夜半ものものしい出立の人相の悪い奴輩《やから》から、

 のっけに宣旨の使いといわれても信用はできぬ。

 腕に覚えがあるかどうか知らぬが、

 いきなり斬りかかってくる。

 宣旨とは何じゃと申して斬り捨てたまでじゃ。

 しかし生捕りとは無念。

 この信連、甲冑《かっちゅう》を身につけ、

 鍛えあげた太刀を持てば、

 押し寄せた役人どもを一人でも無事に帰してはおらぬ。

 宮の行方をお尋ねのようじゃが、拙者知り申さぬ。

 たとえ存じていても申しはせぬ。

 糺問などしても信連には無駄なことじゃ。

 侍が決心したことを拷問などでおどかされるとは、

 卿も侍じゃ、ご存知あろう」

こう宗盛をにらんで答えた信連は、

言い終ると固く口を結んだ。

そしてそっぽを向くと、

もう如何なる質問にも唖《おし》のように沈黙した。

 この信連の態度は居並ぶ平家の侍たちを感心させた。

「これこそ一騎当千の侍」

という言葉が互に囁かれた。

またある男は、

「彼の武勇は今に始ったことではない。

 先年、彼が院の蔵人所《くらんどどころ》にいた時だが、

 手強い強盗六人を取りおさえたことがあった。

 この強盗は、

 守護の武士でも立ち向えなかった程の奴らであったが、

 逃げる賊をただ一人で追いかけ、

 二条堀川で六人を相手の斬合いじゃ。

 そして四人を斬り、二人は生捕った。

 左兵衛尉に任ぜられたのは、この時の手柄からじゃ。

 今斬られるには惜しい侍よ」

と語る者もいた。

この噂が耳に入ったのか、清盛入道は、信連を斬るのを止め、

彼を伯耆《ほうき》の日野へ流すことにきめたのであった。

 その後、平家亡び、源氏の世になった時、

信連は東国へ下り、梶原平三景時に仕えたが、

あるとき、この合戦の話をすると、

頼朝公がこれを聞き、

「けなげなやつ」といって、

能登国に領地を与えられたという。

が、これは後日の話である。

🍂🎼士魂之壱刀 written by MAKOOTO

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