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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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【平家物語86 第4巻 信連合戦①〈のぶつらかっせん〉】🌺この日五月十五日、満月である。 三条の御所で高倉宮は、雲間にかくれ移る皓々《こうこう》たる月を眺めていた。

🙇信連を信達と間違えております。信連合戦が正しいです🙇

この日五月十五日、満月である。

三条の御所で高倉宮は、

雲間にかくれ移る皓々《こうこう》たる月を眺めていた。

遥か東国に下した密使の行方、

そして源氏勢の反応、

あるいは俄かに可能性をおびて

身に迫ってきた皇位のことに思いを廻らせていたのであろうか。

雲間をよぎる月の光を浴びた宮の姿は、

無心に月夜を楽しむとも見えた。

この時、

息せき切って宮の御所に現れたのは入道頼政の急使である。

宮の御乳母の子、

六条亮大夫宗信

《ろくじょうのすけのだいふむねのぶ》は

使いの手紙をあわただしく宮の御前にひらいた。

「宮のご謀叛のことすでに露顕、

 宮を土佐の畑《はた》へお流し申さんと、

 官人ども検非違使別当の命を受けてお迎えに向う。

 急ぎ御所を出でさせ給い、三井寺へ入らせ給え。

この入道頼政も即刻御許に参じ奉らん」

意表を衝《つ》く知らせである。

 

宮は狼狽《ろうばい》した。

才覚すぐれたとはいえ、

月を賞《め》で虫に聴く風雅の道に今まで過して来た宮である。

危急の際の身の処置に、

殆んどなすところなく呆然とするばかりであった。

このとき宮の御前近くにあったのは

長兵衛尉長谷部信連

《ちょうひょうえのじょうはせべののぶつら》という侍、

進み出て気転の策を申し上げた。

「かくなる上は、もう外に方途はございませぬ。

  女房装束に変装されて、お逃れ遊ばしませ」

これは妙案であると、側近が手を借して、

宮の髪は忽ち解かれて下げられ、

衣を何枚も重ねて、市女笠《いちめがさ》をかぶられ、

顔をかくした。

御所の門を出た女装の宮のお供は、

傘《からかさ》を持った六条亮大夫、

袋にものを入れて頭にのせた鶴丸という童、

あたかも若侍が女を迎えて連れて行く姿であった。

三井寺へ向って北に落ちて行く一行は道を急いだ。

途中に大きな溝があったので、

宮は女であることを忘れ、

われ知らず軽やかに飛び越えた。

これを見た通行人たちは、

「なんとはしたない女房の溝の越えようか」

といって立止まり、いぶかし気に見つめたので、

宮の一行はますます足を早めた。

 

御所の留守居役は、

長兵衛尉長谷部信連であったが、

残っていた女房たちを御所のあちこちへ隠しおき、

さて見苦しいものがあったら取り片づけておこうと

部屋部屋を見廻るうちに、

宮の居間の枕もとに笛が忘れられているのを見つけた。

小枝《さえだ》と名づけられた高倉宮愛蔵の一管である。

「これは宮さまご秘愛の笛、

  余りに心|急《せ》かれてのご失念か、

  思い出されればお嘆きあるに相違なし」

と咄嗟《とっさ》に笛を掴むと宮のあとを追った。

ものの五町と走らぬうちに追いついた信連が、

宮に笛を差し出せば、

手にした宮の顔は喜色に溢れた。

「われ死なば、この笛も棺の中に入れてくれよ。

 信連よ、このまま余の供をしてくれぬか」

と宮は頼まれたが、信連は答えた。

「間もなく御所には

 検非違使の役人どもが参るはずでございます。

 その御所に人一人おらぬとはまことに残念に存じまする。

 その上、

 あの御所にこの信連いるとは世間もよく存じておること、

 今夜おりませぬならば、

 さぞかし奴らは夜逃げをしたと思いましょう、

 これが信連口惜しゅう存じまする。

 この信連は弓矢取る身、

 かりそめにも名を惜しみます。

 ご安心召されませ、

 押し寄せる役人どもをしばしあしらった後、

 一方を打破って、後程、宮のお側に参じ仕ります」

こういった信連はただ一人御所へ引き帰した。

🌕🎼月下美人 written by まんぼう二等兵

 

 

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