西の対に帰った源氏は
すぐにも寝室へはいらずに物思わしいふうで庭をながめながら、
端の座敷にからだを横たえていた。
燈籠《とうろう》を少し遠くへ掛けさせ、
女房たちをそばに置いて話をさせなどしているのであった。
思ってはならぬ人が恋しくなって、
悲しみに胸のふさがるような癖が
まだ自分には残っているのでないかと、
源氏は自身のことながらも思われた。
これはまったく似合わしからぬ恋である、
おそろしい罪であることは
これ以上であるかもしれぬが若き日の過失は、
思慮の足らないためと神仏もお許しになったのであろう、
今もまたその罪を犯してはならないと、
源氏はみずから思われてきたことによって、
年が行けば分別ができるものであるとも悟った。
王女御は
身にしむ秋というものを理解したふうにお返辞をされたことすら
お悔やみになった。
恥ずかしく苦しくて、
無気味で病気のようになっておいでになるのを、
源氏は素知らぬふうで平生以上に親らしく世話などやいていた。
🪻🎼#lost memories written by #のる
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🙇動画のタイトルは【源氏物語 615】です。訂正いたします🙇