やっとおとどが口を開いて、
「奥様はどうおなりになりました。
長い年月の間夢にでもいらっしゃる所を見たいと大願を立てましたがね、
私たちは遠い田舎の人になっていたのですからね、
何の御様子も知ることができません。
悲しんで、悲しんで、
長生きすることが恨めしくてならなかったのですが、
奥様が捨ててお行きになった姫君のおかわいいお顔を拝見しては、
このまま死んでは後世《ごせ》の障《さわ》りになると思いましてね、
今でもお護《も》りしています」
おとど の話し続ける心持ちを思っては、
昔あの時に気おくれがして知らせられなかったよりも、
幾倍かのつらさを味わいながらも、
絶体絶命のようになって、右近は、
「お話ししてもかいのないことでございますよ。
奥様はもう早くお亡《かく》れになったのですよ」
と言った。
三条も混ぜて三人はそれから咽《む》せ返って泣いていた。
日が暮れたと騒ぎ出し、
お籠《こも》りをする人々の燈明が上げられたと宿の者が言って、
寺へ出かけることを早くと急がせに来た。
そのために双方ともまだ飽き足らぬ気持ちで別れねばならなかった。
「ごいっしょにお詣《まい》りをしましょうか」
とも言ったが、
双方とも供の者の不思議に思うことを避けて、
おとどのほうでは
まだ豊後介にも事実を話す間がないままで同時に宿坊を出た。
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