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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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薄衣を残して去る空蝉【源氏物語32 第3帖 空蝉3】源氏は部屋に入るが 空蝉は薄物の単だけを残して去る。残された軒端荻を愛す。無情な人への恋しさが募る

【源氏物語 第三帖 空蝉(うつせみ)】 
 〜光源氏は空蝉への思いを断つことが出来ない、空蝉の弟の小君(こぎみ)力を借りて彼女の寝所に近づきます。 碁を打つ空蝉と継娘の軒端荻(のきばのおぎ)を隙見した源氏。 夜もふけ寝所に忍び込んだものの、 空蝉はその気配を察知し、 蝉が脱皮するかのように小袿を脱ぎ捨てて逃げてしまいます。
残された軒端荻を一夜を過ごします。 この出来事が、彼女の空蝉という名前(蝉の抜け殻)の由来となっています。

「もう皆寝るのだろう、じゃあはいって行って上手にやれ」

と源氏は言った。

小君も きまじめな姉の心は動かせそうではないのを知って相談はせずに、

そばに人の少ない時に 寝室へ源氏を導いて行こうと思っているのである。

「紀伊守の妹もこちらにいるのか。私に隙見《すきみ》させてくれ」

「そんなこと、 格子には几帳《きちょう》が添えて立ててあるのですから」

と小君が言う。

 

そのとおりだ、しかし、そうだけれどと源氏はおかしく思ったが、

見たとは知らすまい、かわいそうだと考えて、

ただ夜ふけまで待つ苦痛を言っていた。

小君は、今度は横の妻戸をあけさせてはいって行った。

 女房たちは皆寝てしまった。

「この敷居の前で私は寝る。よく風が通るから」

と言って、

小君は板間《いたま》に上敷《うわしき》をひろげて寝た。

女房たちは東南の隅《すみ》の室に皆はいって寝たようである。

小君のために妻戸をあけに出て来た童女もそこへはいって寝た。

しばらく空寝入りをして見せたあとで、

小君はその隅の室からさしている灯《ひ》の明りのほうを、

ひろげた屏風で隔てて こちらは暗くなった妻戸の前の室へ

源氏を引き入れた。

人目について恥をかきそうな不安を覚えながら、

源氏は導かれるままに

中央の母屋《もや》の几帳の垂絹《たれ》を はねて中へはいろうとした。

それはきわめて細心に行なっていることであったが、

家の中が寝静まった時間には、

柔らかな源氏の衣摺《きぬず》れの音も耳立った。

 

女は近ごろ源氏の手紙の来なくなったのを、

安心のできることに思おうとするのであったが、

今も夢のようなあの夜の思い出をなつかしがって、

毎夜安眠もできなくなっているころであった。  

人知れぬ恋は昼は終日物思いをして、

夜は寝ざめがちな女にこの人をしていた。

 

碁の相手の娘は、

今夜はこちらで泊まるといって

若々しい屈託のない話をしながら寝てしまった。

無邪気に娘はよく睡《ねむ》っていたが、

源氏がこの室へ寄って来て、

衣服の持つ薫物《たきもの》の香が流れてきた時に

気づいて女は顔を上げた。

夏の薄い几帳越しに 人のみじろぐのが

暗い中にもよく感じられるのであった。

静かに起きて、

薄衣《うすもの》の単衣を一つ着ただけで そっと寝室を抜けて出た。

 

はいって来た源氏は、

外にだれもいず一人で女が寝ていたのに安心した。

帳台から下の所に二人ほど女房が寝ていた。

上に被《かず》いた着物をのけて寄って行った時に、

あの時の女よりも大きい気がしても

まだ源氏は恋人だとばかり思っていた。

あまりによく眠っていることなどに不審が起こってきて、

やっと源氏にその人でないことがわかった。

あきれるとともにくやしくてならぬ心になったが、

人違いであるといってここから出て行くことも

怪しがられることで困ったと源氏は思った。

その人の隠れた場所へ行っても、

これほどに自分から逃げようとするのに一心である人は

快く自分に逢うはずもなくて、

ただ侮蔑《ぶべつ》されるだけであろうという気がして、

これがあの美人であったら

今夜の情人にこれをしておいてもよいという心になった。

これでつれない人への源氏の恋も何ほどの深さかと疑われる。

 

やっと目がさめた女は あさましい成り行きにただ驚いているだけで、

真から気の毒なような感情が源氏に起こってこない。

娘であった割合には

蓮葉《はすっぱ》な生意気なこの人はあわてもしない。

源氏は自身でないようにしてしまいたかったが、

どうしてこんなことがあったかと、

あとで女を考えてみる時に、

それは自分のためにはどうでもよいことであるが、

自分の恋しい冷ややかな人が、

世間をあんなにはばかっていたのであるから、

このことで 秘密を暴露させることになっては

かわいそうであると思った。

それで たびたび方違《かたたが》えにこの家を選んだのは

あなたに接近したいためだったと告げた。

 

少し考えてみる人には継母との関係がわかるであろうが、

若い娘心は こんな生意気な人ではあってもそれに思い至らなかった。

憎くはなくても心の惹《ひ》かれる点のない気がして、

この時でさえ源氏の心は無情な人の恋しさでいっぱいだった。

どこの隅にはいって自分の思い詰め方を笑っているのだろう、

こんな真実心というものはざらにあるものでもないのにと、

あざける気になってみても

真底はやはりその人が恋しくてならないのである。

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