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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【源氏物語683 第21帖 乙女38】舞姫の仮の休息所を 若君はそっとのぞいて見た。苦しそうにして舞い姫はからだを横向きに長くしていた。ちょうど雲井の雁と同じほどの年ごろであった。

大学生の若君は失恋の悲しみに胸が閉じられて、

何にも興味が持てないほど心がめいって、

書物も読む気のしないほどの気分が

いくぶん慰められるかもしれぬと、

五節の夜は二条の院に行っていた。

風采《ふうさい》がよくて落ち着いた、

艶《えん》な姿の少年であったから、

若い女房などから憧憬《あこがれ》を持たれていた。

夫人のいるほうでは御簾《みす》の前へも

あまりすわらせぬように源氏は扱うのである。

源氏は自身の経験によって危険がるのか、

そういうふうであったから、

女房たちすらも若君と親しくする者はいないのであるが、

今日は混雑の紛れに室内へもはいって行ったものらしい。

車で着いた舞い姫をおろして、

妻戸の所の座敷に、屏風《びょうぶ》などで囲いをして、

舞い姫の仮の休息所へ入れてあったのを、

若君はそっと屏風の後ろからのぞいて見た。

苦しそうにして舞い姫はからだを横向きに長くしていた。

ちょうど雲井の雁と同じほどの年ごろであった。

それよりも少し背が高くて、

全体の姿にあざやかな美しさのある点は、

その人以上にさえも見えた。

暗かったからよくは見えないのであるが、

年ごろが同じくらいで恋人の思われる点がうれしくて、

恋が移ったわけではないがこれにも関心は持たれた。

若君は衣服の褄先《つまさき》を引いて音をさせてみた。

思いがけぬことで怪しがる顔を見て、

 

「天《あめ》にます豊岡《とよをか》姫の宮人もわが志すしめを忘るな

『みづがきの』(久しき世より思ひ初《そ》めてき)」

 と言ったが、

藪《やぶ》から棒ということのようである。

若々しく美しい声をしているが、

だれであるかを舞い姫は考え当てることもできない。

気味悪く思っている時に、顔の化粧を直しに、

騒がしく世話役の女が幾人も来たために、

若君は残念に思いながらその部屋を立ち去った。

🌷🎼雫 written by H.Lang

 

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