2024-05-05から1日間の記事一覧
鬼界ヶ島に流された、俊寛、康頼、成経の三人は、 少将の舅、宰相教盛の領地である肥前、鹿瀬庄《かせのしょう》から、 何かにつけて衣類や食物を送らせるように手配して呉れたおかげで、 どうやらこうやら生きることだけは出来たらしい。 康頼は、かねてか…
内大臣は車中で娘の恋愛のことばかりが考えられた。 非常に悪いことではないが、 従弟どうしの結婚などはあまりにありふれたことすぎるし、 野合の初めを世間の噂《うわさ》に上されることもつらい。 後宮の競争に女御をおさえた源氏が恨めしい上に、 また自…
後白河法皇は、前々から、 三井寺の公顕《こうけん》僧正を師範として、 真言《しんごん》の秘法を学んでいられたが、 大日経《だいにちきょう》、金剛頂経《こんごうちょうきょう》、 蘇悉地経《そしつちきょう》の三部の伝授も済み、 九月四日、 三井寺で…
そもそも成親卿が平家滅亡の計りごとを練るようになったのは、 いつかの人事異動が基であったのだが、 あの時に、やはり、右大将を平宗盛に横取りされて、 がっかりして家にひきこもってしまった人がある。 徳大寺大納言 実定《じってい》である。 その後も…
大臣は帰って行くふうだけを見せて、 情人である女の部屋にはいっていたが、 そっとからだを細くして廊下を出て行く間に、 少年たちの恋を問題にして語る女房たちの部屋があった。 不思議に思って立ち止まって聞くと、 それは自身が批評されているのであった…