google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

源氏は藤壺の宮から返事をもらう【源氏物語107 第七帖 紅葉賀9】西の対の若紫のところに行くと拗ねている。自身は笛を吹きながら琴を教える。

源氏は二条の院の東の対《たい》に帰って、

苦しい胸を休めてから後刻になって左大臣家へ行こうと思っていた。

前の庭の植え込みの中に何木となく、

何草となく青くなっている中に、

目だつ色を作って咲いた撫子《なでしこ》を折って、

それに添える手紙を長く王命婦《おうみょうぶ》へ書いた。

 

よそへつつ 見るに心も慰まで

 露けさまさる 撫子の花

 花を子のように思って愛することは

 ついに 不可能であることを知りました。」

とも書かれてあった。

だれも来ぬ隙《すき》があったか命婦はそれを宮のお目にかけて、

「ほんの塵《ちり》ほどのこのお返事を書いてくださいませんか。

 この花片《はなびら》にお書きになるほど、少しばかり」

と申し上げた。

 

宮もしみじみお悲しい時であった。

 袖《そで》濡《ぬ》るる 露のゆかりと思ふにも

 なほうとまれぬ やまと撫子

とだけ、

ほのかに、書きつぶしのもののように書かれてある紙を、

喜びながら命婦は源氏へ送った。

例のように返事のないことを予期して、

なおも悲しみくずおれている時に

宮の御返事が届けられたのである。

胸騒ぎがしてこの非常にうれしい時にも 源氏の涙は落ちた。

 

じっと物思いをしながら寝ていることは堪えがたい気がして、

例の慰め場所西の対へ行って見た。

少し乱れた髪をそのままにして部屋着の袿姿《うちかけすがた》で

笛を懐しい音《ね》に吹きながら座敷をのぞくと、

紫の女王はさっきの撫子が露にぬれたような

可憐なふうで横になっていた。

非常に美しい。

こぼれるほどの愛嬌《あいきょう》のある顔が、

帰邸した気配がしてからすぐにも出て来なかった源氏を

恨めしいと思うように向こうに向けられているのである。

座敷の端のほうにすわって、

「こちらへいらっしゃい」

と言っても素知らぬ顔をしている。

 

「入りぬる磯《いそ》の草なれや」 (みらく少なく恋ふらくの多き)

と口ずさんで、

袖を口もとにあてている様子に

かわいい怜悧《りこう》さが見えるのである。

「つまらない歌を歌っているのですね。

 始終見ていなければならないと思うのはよくないことですよ」

源氏は琴を女房に出させて紫の君に弾かせようとした。

「十三|絃《げん》の琴は

 中央の絃《いと》の調子を 高くするのは

 どうもしっくりとしないものだから」

と言って、

《じ》を平調に下げて掻き合わせだけをして姫君に与えると、

もうすねてもいず美しく弾き出した。

小さい人が左手を伸ばして《いと》をおさえる手つきを

源氏はかわいく思って、自身は笛を吹きながら教えていた。

頭がよくてむずかしい調子などもほんの一度くらいで習い取った。

何ごとにも貴女らしい素質の見えるのに 源氏は満足していた。

 

源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷

https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

💠源氏物語 第七帖 紅葉賀💠(前半) 

世間は朱雀院で開かれる紅葉賀に向けての準備でかまびすしい。 

桐壺帝は最愛の藤壺が懐妊した喜びに酔いしれ、

 一の院の五十歳の誕生日の式典という慶事を

より盛大なものにしようという意向を示しているため、

臣下たちも舞楽の準備で浮き立っている。

 ところが、それほどまでに望まれていた藤壺の子は桐壺帝の御子ではなく、

 その最愛の息子光源氏の子であった。

 

 このことが右大臣側の勢力、特に東宮の母で藤壺のライバル、

 また源氏の母を迫害した張本人である弘徽殿女御に発覚したら

二人の破滅は確実なのだが、

 若い源氏は向こう見ずにも藤壺に手紙を送り、

また親しい女官を通して面会を求め続けていた。

 

 一方で、藤壺は立后を控え狂喜する帝の姿に罪悪感を覚えながらも、

 一人秘密を抱えとおす決意をし、源氏との一切の交流を持とうとしない。 

源氏はそのため華やかな式典で舞を披露することになっても浮かない顔のままで、

 唯一の慰めは北山から引き取ってきた藤壺の姪に当たる少女若紫(後の紫の上)の

 無邪気に人形遊びなどをする姿であった。 

 

帝は式典に参加できない藤壺のために、 

特別に手の込んだ試楽(リハーサル)を宮中で催すことに決める。 

源氏は青海波の舞を舞いながら御簾の奥の藤壺へ視線を送り、

 藤壺も一瞬罪の意識を離れて源氏の美貌を認める。

 源氏を憎む弘徽殿女御は、舞を見て 

「まことに神が愛でて、さらわれそうな美しさだこと。おお怖い。」と皮肉り、

 同席していたほかの女房などは「なんて意地の悪いことを」と噂する。 

 

紅葉の中見事に舞を終えた翌日、

源氏はそれとは解らぬように藤壺に文を送ったところ、

思いがけず返事が届き胸を躍らせた。

 五十の賀の後、源氏は正三位に。

頭中将は正四位下に叙位される。

この褒美に弘徽殿女御は「偏愛がすぎる」と不満を露わにし、

東宮に窘められる。

 

 翌年二月、藤壺は無事男御子(後の冷泉帝)を出産。

 桐壺帝は最愛の源氏にそっくりな美しい皇子を再び得て喜んだが、

それを見る源氏と藤壺は内心罪の意識に苛まれるのだった。

 

💠聴く古典文学📚少納言チャンネルは、聴く古典として動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷