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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【私本太平記36 藤夜叉②】田楽役者の玉虫色に光る衣裳も、田楽女の白粉顔も、かえって夢幻をあざらかにし、われひと共にひとしい時代の抱く哀歓と、それが求める救いの滑稽とを、一種の妖気のように醸していた。

女は、高氏の曲もない飲みぶりに、

その杯を愛惜《いとし》んで、

「小殿、おながれを」

と媚《こ》びて、ねだッた。

 そして、彼の浮かない横顔と舞台の方とを等分に見つつ。

「小殿も田楽はお好きなのでございましょう」

「む。きらいでもない」

「さして、お好きでも?」

「ま、半々か」

「ホホホホ。お気むずかしそうな。

今宵は、そんな御不興顔はせぬものでございますよ」

「なぜ」

「わたくしたちの召されたのも、花夜叉のお城興行も、

みな、小殿への御馳走とか」

「そうだったな。もすこし、笑うてでもいなければ悪かったか」

「おとりもちの至らぬせいと、後でわたくしたちが、

お叱りをうけまする」

「それでは不愍《ふびん》。

おまえたちは土地《ところ》の遊女であろうがの。

わしも笑いたいのだ。笑わせてくれい」

「お門違い。それは舞台の方へおねだりなされませ」

 高氏はあやされている子供に似ていた。

 が、まもなく、彼もすべてをわすれ顔に、

心から今夜の田楽饗応に溶け入った風である。

頬には少し酔いものぼってくる。

 右馬介は桟敷に見えない。家中一同の中なのだろう。

折々、高氏の姿へ、くばられて来る注視は、

やや離れた座席にある佐々木道誉と土岐左近の眼であった。

 演技の番数《ばんかず》は、佳境らしい。

 いまも、喝采の波につれ、どっと笑いのしぶきが立つ。

 弓の的場を変えた俄舞台は、よしず囲いに、よしず廂。

背景《うしろ》においた屏風と両わきの袖幕とが、

装置といえばいえもする。

 夜空には、たくさんな星。

 またここにも、無数の吊り灯《あかり》やら芝居篝が、

ソヨ風のたび油煙《すみ》を吹いたり火をハゼたりした。

そのため、舞台はのべつ明暗のまたたきをしていたが、

しかし、田楽役者の玉虫色に光る衣裳も、田楽女の白粉顔も、

かえって夢幻を鮮《あざ》らかにし、

われひと共にひとしい時代の抱く哀歓と、

それが求める救いの滑稽とを、

一種の妖気のように醸《かも》していた。

——東《あづま》より

きのふ来たれば

女《め》も持たず

この着たる紺の狩襖《かりあを》と

娘、換へ給《た》べ

 ——楽器には絃楽器はなく、

簓《ささら》、腰鼓《くれつづみ》、フリ鼓、

銅子《どびょうし》といったような類。演《だ》し物によっては笛もつかう。

 おどけを主とした舞踊である。

🌺🎼#妖かしの夜 written by# ゆうり

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