2023-06-02から1日間の記事一覧
源氏はまた去年の野の宮の別れが このころであったと思い出して、 自分の恋を妨げるものは、 神たちであるとも思った。 むずかしい事情が間にあればあるほど情熱のたかまる癖を みずから知らないのである。 それを望んだのであったら加茂の女王との結婚は 困…
斎院のいられる加茂はここに近い所であったから 手紙を送った。 女房の中将あてのには、 『物思いがつのって、とうとう家を離れ、 こんな所に宿泊していますことも、 だれのためであるかとはだれもご存じのないことでしょう。』 などと恨みが述べてあった。 …
幾日かを外で暮らすというようなことを これまで経験しなかった源氏は 恋妻に手紙を何度も書いて送った。 出家ができるかどうかと試みているのですが、 寺の生活は寂しくて、 心細さがつのるばかりです。 もう少しいて 法師たちから教えてもらうことがあるの…
木立ちは紅葉をし始めて、 そして移ろうていく秋草の花の哀れな野をながめていては 家も忘れるばかりであった。 学僧だけを選んで討論をさせて聞いたりした。 場所が場所であるだけ人生の無常さばかりが思われたが、 その中でなお源氏は恨めしい人に 最も心…