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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【私本太平記28 第1巻 ばさら大名③】「足利家も源氏の御嫡流、佐々木殿も頼朝公以来の名族。 申さば同じ流れのお裔《すえ》、ここでお会いなされる御縁が、自然待っていたものとぞんずる」と述べた。

ところで“名のり”を高氏と称する当の人物というのは、

その江北京極家の当主であった。

つまりこの地方の守護大名、

佐々木佐渡ノ判官《ほうがん》高氏殿こそがその人なので……と、

土岐左近は、

一応の紹介の辞でもすましたような、したり顔で

「足利家も源氏の御嫡流、佐々木殿も頼朝公以来の名族。

 申さばおなじ流れのお裔《すえ》、

 ここでお会いなされる御縁が、自然待っていたものとぞんずる」

舌にまかせてここまで述べた。

しかし自分の小細工を疑われてもと、考えたらしく。

「じつは最前、あなた様を佐々木殿と見違えたのは、

 供の列を先にやって、野路の茶店で憩《いこ》うておるうち、

 ふと、当の殿を見失うたので、

 慌てて後より追っかけたための粗忽《そこつ》でおざった。

 くれぐれ、無礼はおゆるしを」

 そんなことはどうでもいいように、

又太郎は彼方の群れをチラと見やって。

「会う会わぬは、わしの所存でない。佐々木殿の望みか、

 それとも御辺の一存か」

「いやいや、云々《しかじか》の仔細でと、お噂を申したところ、

 すりゃ、ぜひお目にかかりたい。

 なおまた今宵は、

柏原《かしわばら》のわが屋形に御一泊たまわらば、

 殊のほかな幸いだがと、

あれ、あのように、供人らも控えさせて、

不知哉川もお渡りなく、お待ち申しておられますわけで」

 又太郎は、後ろへ言った。

「右馬介。どう答えよう」

「……せっかくなれば」

「そうだなあ、こちらは飄然《ひょうぜん》たる旅人にすぎぬが」

「まず、大事ございますまい」

 右馬介もやや警戒心をほぐした容子だ。

眼に言外のものをいわせて頷き返す。

 はやくも土岐左近は、佐々木高氏のそばへ駒を廻して行った。

そして何かささやいていたが、すぐ取って返すなり、

又太郎主従へ向ってこう告げた。

「佐々木殿には、なにぶん、ここは路傍のこと。

 ごあいさつもなりかぬれば、

自身はお客人《まろうど》の先導として、

一と足さきに屋形へ駈けん。

……陽もまだ高し、

後よりゆるゆる御案内して参れよとの仰せでおざった。

いざ、お供いたしましょうず」

——なるほど、

見てあれば、河原立ちしていた供人の同勢は、

弓、長柄《ながえ》などを燦々《さんさん》とゆるぎ出して、

もうそこの舟橋を彼方へ渡りかけている。

 なぜか案内の土岐左近はやたらにしッしッと駒を追う。

——ために磨針峠の上、

番場の茶屋についたのも思いのほか早く、

琵琶湖の夕照がまだ後ろにはよく見えた。

「どうぞ、お息休めに」

茶屋の床几には先発した佐々木家の臣十名ほどが待ちうけていた。

青磁の馬上杯に銚子を添え持ち

「……お水がわりに」と、

鞍わきから馬上へすすめる。

「お。これは甘露」

八献、十献、又太郎はたてつづけに飲む。

 同様に右馬介もすすめられたが、彼は飲まない。

むしろ又太郎の余りに人を疑わぬ態度も心もとなく、

密《ひそ》かな警戒心を内に。

「土岐どの。当のお屋形はあと何里ほど」

「柏原はすぐでござるが、なお伊吹へかけて少々登るので」

「では、伊吹山の中腹か」

「されば、ちと急がぬことには」

さてこそ、ここの“待ち家来”は

松明《たいまつ》持ちのためかとわかった。

 柏原から北へ、やがてまた、伊吹の裾をやや登ってゆく。

もちろん宵はとッくに過ぎていた。

やがて縞目《しまめ》をなす杉林のおくに、

高楼の灯やら庭上の篝火《かがり》やら、

そこの一郭だけが蛍かごのように明るく見えた。

 先に帰館した高氏の命か、

総門内では、衆臣が立ち迎える。

ただちに、又太郎主従は客殿へ、また湯殿へ、

そして、膳部まで出てしまった。

夜はすでに晩《おそ》かったし、疲れもある。

で、対面は翌日にという配慮らしい。

💐🎼Bloom inside written by Anonyment  

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