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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語47 第2巻 卒塔婆流し①〈そとばながし〉】〜The Tale of the Heike🪷

少将と康頼の熊野詣では、異常な熱心さで続けられた。

時には、徹夜で祈願をすることもあった。

ある日いつもの通り、夜になって、二人は一晩中、

今様《いまよう》などを歌い続けて、

さすがに明け方疲れ果てて眠ってしまったことがある。

康頼も知らずしらずの内にまどろんでいたらしい。

沖の方から白帆をかけた小舟がやってきて、

中から紅の袴《はかま》をつけた女達が三十人ばかり、

岸にあがってきて鼓をうち、

声を合せて今様を歌い出したのであった。

よろずの仏の願《がん》よりも

千手《せんじゅ》の誓《ちかい》ぞ頼もしき。

枯れたる草木も忽ちに 花咲き実なるとこそきけ。

三べんほど、くり返すと、

その姿はかき消すようにみえなくなった。

「あれ、女達が」

自分の声で目を覚した康頼は、

始めて夢であったことに気がついて不思議な気がした。

「どうやら、あれは竜神の化身であったらしいが、

三所権現の内、西の御前と申すは、千手観音がご本体、

竜神は千手観音の守護神じゃ。

これは、熊野権現がわれらの願を

おきき入れになったしるしかも知れぬぞ」

「今後は一層の精進をいたそう」

 暫くして、又ある晩夢を見た。

沖から吹いてきた風に、二枚の木の葉が舞い下りてきて、

二人の袂《たもと》に吹きかけた。手にとってみると、

熊野の南木《なぎ》の葉である。

虫に食われて、ところどころ穴のあいているのが、

よくみると言葉になっていた。

千早ぶる神に祈りのしげければ

  などか都へ帰らざるべき

少将と康頼は、夢から覚めたあと、

いつまでもそのことを話し合っては、勇気づけられたのである。

康頼は、何としても故郷の恋しさに耐えられなかったので、

せめてもの心の足しにと、千本、卒都婆《そとば》を作り、

梵字、年号、月日、それに、平判官康頼と署名し、

二首の歌を書きつけた。

薩摩潟沖の小島に我ありと

 親には告げよ八重の潮風

思い遣《や》れしばしと思う旅だにも

 なお故郷《ふるさと》は恋しきものを

その卒都婆を、浜辺に持ってゆくと、

「八百よろずの諸々の神々よ、願わくは、一本なりと都に伝えて下さい」

と祈りながら、寄せては返す波のたびごとに、

そっと卒都婆を海へ送り出した。卒都婆を作っては流し、

作っては流ししていたから、

長い間には、卒都婆も随分の数になったわけである。

🪷🎼Bloom inside written by Anonyment

 

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