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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語48 第2巻 卒塔婆流し②〈そとばながし〉】〜The Tale of the Heike🌊


 康頼の真心が通じたのか、神明のご加護があったのか、

その内の一本が安芸《あき》の厳島《いつくしま》に

流れついたのであった。

 康頼の知り合いのある僧が、

便船でもあったら鬼界ヶ島にでも渡り、

康頼の消息を訪ねてみたいと思い立ち、

西国修行に出かけて厳島に参詣した。

厳島大明神は、元々海に縁故のある神で、

娑竭羅《しゃかつら》竜王の第三の姫宮といわれ、

今日まで、いろいろ不思議な霊顕のあったことを聞かされて、

僧は暫く止まって参籠することにした。

 

厳島大明神は、八つの神殿から成り、海の際に臨んでいた。

夜になると月が昇り、その澄んだ影は、

水にも、砂浜にも、美しい光を投げていた。

満潮になると、大鳥居も、朱塗りの玉垣も、

瑠璃《るり》色を帯びて青白く光った。

引潮になると、社前の白砂には霜が降りたようにみえた。

その神秘的な美しさに我れ知らずうっとりとしていた僧が、

気がついてみると、

波の合い間合い間に漂い流れている藻くずの間に

何やら妙なものが浮いていた。

手に取って拾い上げてみると卒都婆である。

「何だってこんなものが」

と思いながら、よくよく眺めてみると、

それが例の康頼が流した内の一つなのである。

文字を彫りこんでおいたものが、

波に洗われても消えずにそのまま残っているのであった。

僧は早速、この卒都婆を持って急いで京に行き、

一条の北、紫野《むらさきの》に忍び住む

康頼の老母と妻子にみせたのであった。

「何と不思議な、

 いくらでも海辺はあるものをよりによって厳島とは、

 それにしても、もろこしのあたりにも流れつかずに、

 こんな所まで流れてきて、

 又々私達に悲しみを憶い出させようというのか」

老母は卒都婆を手にして、

しみじみと眺めながらつぶやいた。

 

この事が法皇のお耳にも入り、

「何? 彼らはまだ生きていたか、何と哀れなことよ」

と、また更に涙を流しておいでになった。

 法皇は、更に、重盛にこの事を伝え、

遂に卒都婆は、清盛の手にも渡った。

さすがに木石でもない清盛も、

心中同情を禁じ得なかったらしく、

憐れみの言葉をもらしたのであった。

🌊🎼ぼくは夏色、きみは夢の中、 written by ともじろう

 

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