寮門に顕官の車が無数に止まった。
あらゆる廷臣が今日はここへ来ることかと思われる列席者の
派手《はで》に並んだ所へ、
人の介添えを受けながらはいって来た若君は、
大学生の仲間とは見ることもできないような
品のよい美しい顔をしていた。
例の貧乏学生の多い席末の座につかねばならないことで、
若君が迷惑そうな顔をしているのももっともに思われた。
ここでもまた叱るもの威嚇するものがあって不愉快であったが、
若君は少しも臆《おく》せずに進んで出て試験を受けた。
昔学問の盛んだった時代にも劣らず大学の栄えるころで、
上中下の各階級から学生が出ていたから、
いよいよ学問と見識の備わった人が輩出するばかりであった。
文人《もんにん》と擬生《ぎしょう》の試験も
若君は成績よく通ったため、
師も弟子《でし》もいっそう励みが出て学業を熱心にするようになった。
源氏の家でも始終詩会が催されなどして、
博士《はかせ》や文士の得意な時代が来たように見えた。
何の道でも優秀な者の認められないのはないのが当代であった。
🌿🎼タイム・ミュゼアム written by のる
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