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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

平家物語79 第4巻 厳島御幸③〜The Tale of the Heike 🌊

翌十九日、

大宮大納言 隆季《たかすえ》の徹宵の準備で

御幸はつつがなく行なわれた。

三月も半ばを過ぎている。

霞に曇る有明の月おぼろな空の下、御幸の一行は、

地に淡い影を落しながら鳥羽殿へ向った。

鳥の声、空を渡るのを見上げれば、

遥か北陸を目指す雁の群である。

一群消えればまた一群、哀れをもよおす雁の声は、

御幸の者の胸にひびいた。

鳥羽殿についたのはまだ未明であった。

御車より上皇は降り、門を開いて進んだ。

 すでに春は暮れなんとしている。

薄暗い木立、人の気配すらない。

木々の梢の花色あせて、

樹葉は早くも夏を告げる装いをしている。

鳴く鶯《うぐいす》の声も力なく老いていた。

上皇の胸には、

われ知らず去年の盛儀が思いだされてきた。

正月六日、

朝覲《ちょうきん》のための法住寺殿への行幸である。

訪れた上皇を迎えて、

笛、鐘、太鼓が一斉に乱声《らんじょう》の楽を奏した。

正装の諸卿は列を正してこれを迎え、

六衛府の官人が幔幕《まんまく》を張った門を開けた。

先ず上皇を迎えたのは、

すでにわが季節の去り行くのを知った鶯の年老いた声である。

 法皇は知らせを受けて、

寝殿の階《はし》がくしの間《ま》に上皇を待っていた。

高倉上皇、今年《ことし》二十歳、

夜明けの月の光をやわらかに浴びて立っていた。

青年の優美な姿は、上皇に息子の母、

故建春門院のありし日を偲ばせた。

涙にくれた法皇は、

この暁、二人の人にあったのである。

その一人はわが子であり、

他の一人は、かつての寵妃《ちょうき》である。

父と息子との対面は静かに行われた。

間近かに設けられた座についた法皇、

上皇の御前に伺候したのは尼御前ただ一人、

二人の話し声は低かったが、

夜が明け陽が高くなるまで続けられた。

 法皇に暇を告げられた上皇は、

草津から海路、安芸へ向われた。

🌕🎼月明りの中で written by ゆうり

 

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