〜新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、
どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、
春らしい霞《かすみ》の中では、
芽を含んだ木の枝が生気を見せて煙っているし、
それに引かれて人の心ものびやかになっていく。
まして玉を敷いたと言ってよい六条院の庭の初春のながめには
格別なおもしろさがあった。
常に増してみがき渡された各夫人たちの住居《すまい》を写すことに
筆者は言葉の乏しさを感じる。
春の女王《にょおう》の住居はとりわけすぐれていた。
梅花の香りも御簾《みす》の中の薫物《たきもの》の香と
紛らわしく漂っていて、
現世の極楽がここであるような気がした。
さすがにゆったりと住みなしているのであった。
女房たちも若いきれいな人たちは姫君付きに分けられて、
少しそれより年の多い者ばかりが紫の女王《にょおう》のそばにいた。
上品な重味のあるふうをして、
あちらこちらに一団を作っているこうした女房らは
歯固《はがた》めの祝儀などを仲間どうしでしていた。
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