派手な薄色の小袿《こうちぎ》に撫子《なでしこ》色の細長を
着ている取り合わせも若々しい感じがした。
身の取りなしなどに難はなかったというものの、
以前は田舎の生活から移ったばかりのおおようさが見えるだけのものであった。
紫夫人などの感化を受けて、
今では非常に柔らかな、繊細な美が一挙一動に現われ、
化粧なども上手になって、
不満足な気のするようなことは一つもないはなやかな美人になっていた。
人の妻にさせては後悔が残るであろうと源氏は思った。
右近も二人を微笑《ほほえ》んでながめながら、
父親として見るのに不似合いな源氏の若さは、
夫婦であったなら最もふさわしい配偶であろうと思っていた。
「ほかからのお手紙のお取り次ぎは決してだれもいたさないのでございます。
前からも送っておいでになります方のは、
三度も四度も続けてお返しばかりしてはと思いまして、
ただ私たちだけでお預かりしているのでございますから、
お返事は、殿様が書けとお言いになります分だけを、
それも迷惑がってお書きになるだけなのでございます」
と右近が言う。
「それにしてもこの控え目な結んであった手紙はだれのかね。
苦心の跡の見えるものだ」
微笑を浮かべながら源氏はこの手紙に目を落としていた。
「それはぜひ置かせてくれとお言いになったのでございまして、
内大臣家の中将さんがこちらの海松子《みるこ》を前に知っていらっしゃいまして、
海松子が持って参ったのでございます。
だれもまだ内容は拝見しておりませんでした」
「かわいい話ではないか。
今は殿上役人級であっても、あの人たちに失敬なことをしていい訳はない。
公卿といってもこの人の勢いに必ずしも皆まで匹敵できるものでない。
私の予言は必ず当たるよ。
この人たちには露骨でなく、上手に切尖をはずさせるように工夫するのだね。
おもしろい手紙だよ」
と言って、源氏はその手紙をすぐにも下へ置かずに見ていた。
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