「短いはかない縁だったと、私はいつもあの人のことを思っている。
この家に集まって来ている奥さんたちもね、
あの時にあの人を思ったほどの愛を感じた相手でもなかったのが、
皆あの人のように短命でないことだけで、
私の忘れっぽい男でないのを見届けているのが多いのに、
あの人の形見にはただ右近だけを世話していることが
残念な気のすることは始終だったのに、
そうして姫君を私の手もとへ引き取ることができればうれしいだろう」
こう言って、源氏は姫君へ最初の手紙を書いた。
あの末摘花に幻滅を感じたことの忘れられない源氏は、
そんなふうに逆境に育った麗人の娘、
大臣の実子も必ずしも期待にそむかないとは思われない不安さから
手紙の返事の書きようでまずその人を判断しようとしたのである。
まじめにこまごまと書いた奥には、
〜こんなに私があなたのことを心配していますことは、
『知らずとも尋ねて知らん三島江に生《お》ふる三稜《みくり》のすぢは絶えじな』
とも書いた。
右近はこの手紙を自身で持って行って、源氏の意向を説明した。
姫君用の衣服、女房たちの服の材料などがたくさん贈られた。
源氏は夫人とも相談したものらしく、
衣服係の所にできていた物も皆取り寄せて、色の調子、
重ねの取り合わせの特にすぐれた物を選んで贈ったのであったから、
九州の田舎に長くいた人々の目に珍しくまばゆい物と映ったのは
もっともなことである。
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