三位入道、渡辺などの党を殲滅した平家の兵たちは、
三井寺の大衆もまぜて凡《およ》そ五百ほどの首をあげた。
頼政の首級は遂に発見できなかったが、
彼の子息たちの首はすべて探し出された。
太刀、長刀の切先にこの首を突きさした平家の軍勢は
勝鬨《かちどき》をあげ、
勇みわめきながら帰途についたが、その騒ぎは大きかった。
斬り落した首をかかげた軍勢が
六波羅についたのは夕方近かった。
首実験は簡単にすんだが、
問題になったのは高倉宮の首級である。
宮の世に隠れたような生活から
御所に出入してその顔を知っているものは少い。
先年宮が病気のとき召された医者
典薬頭《てんやくのかみ》定成がいるはずである、
あの者なら首を確認できようというので、
使いが走ったが、
ただいま病の床に伏しているのでお役には立てない、
と申したきり出てこない。
そこで宮の情を受けた女が求められた。
ここに宮が長年寵愛しつづけて、
宮の子も多く生んだ女房が漸く見つかり、
これなら見損じはあるまいと呼び出された。
宮の首を一目見たこの女房は、
袖を顔に押しあてるとそのままうつぶした。
肩が大きく波打ち、
こらえきれぬ嗚咽《おえつ》がもれる。
宮の首は確かめられたのである。
🌃🎼 星が落ちる written by のる
🙇♀️動画タイトル 平家物語105となってますが106が正しいです。すみません🙇♀️
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