
岸に先手をきっておどりあがった足利又太郎の装立ちは、
赤革縅の鎧、黄金作りの太刀、
二十四本背に差したるは切斑《きりふ》の矢、
重籐《しげとう》の弓を小脇にかいこんで、
乗る馬は連銭|葦毛《あしげ》、
鐙《あぶみ》をふんばって声を轟《とどろ》かせた。
「昔、朝敵|将門《まさかど》を亡ぼした
俵藤太秀郷《たわらとうたひでさと》十代の後胤、
下野国の住人足利太郎俊綱の子又太郎忠綱、
生来十七歳のもの、
かく無位無官の者が宮に弓を引き奉るは恐れ多いことなれど、
弓矢の冥加《みょうが》平家の上に
とどまっているものと存ずる。
三位入道の御方のうち、われと思わん人は寄りあい給え、
見参せん」
こう名乗りをあげると、足利は平等院の内へ攻めこんだ。
この有様を眺めた大将軍の知盛は、
全軍に下知して渡河を命じた。
二万八千余騎どっと川に馬を入れれば、
さしも早い宇治川の水もたまらず上流に押し返される有様である。
一度び押し返された水は激しい急流となって流れこみ、
このため伊勢、伊賀両国の兵の馬筏《うまいかだ》が破られて
あれよと言う間に水に流される始末だ。
萌黄《もえぎ》、緋縅《ひおどし》、
赤縅など色とりどりの鎧の兵が浮きつ沈みつ流され、
溺れるもの六百余人を数えた。
平家の大勢が河を渡ると、
そのまま水しぶきをあげて平等院になだれこんで、
両軍必死の戦いが始まった。
三位入道、渡辺の勢が矢を射かけ太刀を振って防ぐ間に、
高倉宮は奈良を目指して落ちていった。
⚔️🎼虚無のイドラ written by shimtone
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