大宮は尼姿になっておいでになるがまだお美しかったし、
そのほかどこでこの人の見るのも
相当な容貌が集められている女房たちであったから、
女の顔は皆きれいなものであると思っていたのが、
若い時から美しい人でなかった花散里が、
女の盛りも過ぎて衰えた顔は、
痩《や》せた貧弱なものになり、
髪も少なくなっていたりするのを見て、
こんなふうに思うのである。
年末には正月の衣裳を大宮は
若君のためにばかり仕度《したく》あそばされた。
幾重ねも美しい春の衣服のでき上がっているのを、
若君は見るのもいやな気がした。
「元旦だって、私は必ずしも参内するものでないのに、
何のためにこんなに用意をなさるのですか」
「そんなことがあるものですか。
廃人の年寄りのようなことを言う」
「年寄りではありませんが廃人の無力が自分に感じられる」
若君は独言《ひとりごと》を言って涙ぐんでいた。
失恋を悲しんでいるのであろうと、
哀れに御覧になって宮も寂しいお顔をあそばされた。
💐🎼寂しさを募らせて written by ゆうり
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