大宮は力をお落としになって、
「たった一人あった女の子が亡くなってから
私は心細い気がして寂しがっていた所へ、
あなたが姫君をつれて来てくれたので、
私は一生ながめて楽しむことのできる宝のように
思って世話をしていたのに、
この年になってあなたに信用されなくなったかと
思うと恨めしい気がします」
とお言いになると、
大臣はかしこまって言った。
「遺憾《いかん》な気のしましたことは、
その場でありのままに申し上げただけのことでございます。
あなた様を御信用申さないようなことが、
どうしてあるものでございますか。
御所におります娘が、
いろいろと朗らかでないふうでこの節邸《やしき》へ
帰っておりますから、
退屈そうなのが哀れでございまして、
いっしょに遊んで暮らせばよいと思いまして、
一時的につれてまいるのでございます」
また、
「今日までの御養育の御恩は決して忘れさせません」
とも言った。
こう決めたことはとどめても思い返す性質でないことを
御承知の宮はただ残念に思召すばかりであった。
「人というものは、
どんなに愛するものでも
こちらをそれほどには思ってはくれないものだね。
若い二人がそうではないか、
私に隠して大事件を起こしてしまったではないか。
それはそれでも大臣は
りっぱなでき上がった人でいながら私を恨んで、
こんなふうにして姫君をつれて行ってしまう。
あちらへ行ってここにいる以上の
平和な日があるものとは思われないよ」
お泣きになりながら、
こう女房たちに宮は言っておいでになった。
💐🎼貴方はその火を視たか written by のる
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