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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

平家物語66 第3巻 医師問答①〜The Tale of the Heike🪷

その頃、丁度熊野に参詣した重盛は、

一晩中、何事かを祈願していた。

日頃から、平家の行末に、

暗い予感を感じている重盛にとって、

それは一身をかけた重大な祈りであった。

「父の清盛入道は、何かと悪逆無道を働き、

 法皇の心を悩まし、息子としては、

 精一杯諫言いたしておりますが、

 我が身が至らぬため思うようにまいりません。

 この様子では、

 父清盛一代の栄華さえ案じられる状態でございます。

 ましてや、

 子孫が相次いで繁栄などは以ての他の事かとも思われます。

 ここに至って私の思いますには、

 なまじ高位高官に列せられ、

 世の浮沈をなめるよりは名誉を捨て、

 官を退き、この世の栄誉を捨てて、

 来世の極楽往生を願った方がどんなに良いかとも思うのですが、

 凡夫の悲しさ、中々実行できません。

 願わくは、南無権現、金剛童子、

 清盛入道の悪心を柔らげ、子孫繁栄、

 朝廷にお仕えして

 いついつまでも天下に平和をもたらしめて下さい。

 もし又それがかなえられず、

 清盛入道一代の栄華に終るならば、

 この重盛の命をお取り上げになって、

 来世の苦輪《くりん》をお助け下さい」

重盛が一心に祈っている最中、

灯籠の火のようなものが、

重盛の身から発したかと思うとぱっと消え失せた。

見ていた者は多かったが、

気味の悪さに誰も口には出さなかった。

 参詣の帰りに岩田川を渡った時、

嫡子維盛始め公達《きんだち》が、

折柄、夏の事で暑い盛りでもあったので、

涼みがてら水遊びなどをした。

彼らは一様に浄衣の下に薄紫色の衣を着けていたが、

水にぬれて、丁度喪服の色に見えた。

筑後守貞能《ちくごのかみさだよし》が、これをみて、

「何で又、喪服めいた浄衣などお召しなのですか? 

 縁起でもない、お召し替えなされませ」

というと、重盛が軽く制して、

「私の願いが聞き届けられたのだろう、

 着替えるには及ばぬ」

といって、熊野にお礼の奉幣使を送った。

人々は何の事かよくわからずに、

おかしなことだと思っていた。

 熊野から帰ると間もなく、

重盛は病の床に就く身となった。

もとより覚悟の前であるから、

療治もされず祈祷も許さなかった。

🪷🎼#仄見える花衣 written by #ハシマミ

 

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