心細くて人間的な生活を捨てないから
ますます悲しみが多いのである、
自分などは僧房の人になるべきであると、
こんな決心をしようとする時に
いつも思われるのは 若い夫人のことであった。
優しく自分だけを頼みにして生きている妻を
捨てえようとは思われないのであった。
宮のお心も非常に動揺したのである。
源氏はその時きり引きこもって手紙も送って来ないことで
命婦などは気の毒がった。
宮も東宮のためには
源氏に好意を持たせておかねばならないのに、
自分の態度から人生を悲観して
僧になってしまわれることになってはならぬと
さすがに思召すのであった。
そうといってああしたことが始終あっては
瑕《きず》を捜し出すことの好きな世間は
どんな噂を作るかが想像される。
自分が尼になって、
皇太后に不快がられている后の位から退いてしまおうと、
こうこのごろになって宮はお思いになるようになった。
院が自分のためにどれだけ重い御遺言をあそばされたかを考えると
何ごとも当代にそれが実行されていないことが思われる。
🌸🎼 時の残影 written by のる🌸
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