この上で力で勝つことは
なすに忍びない 清い気高さの備わった方であったから、
源氏は、
「私はこれだけで満足します。
せめて今夜ほどに接近するのをお許しくだすって、
今後も時々は私の心を聞いてくださいますなら、
私はそれ以上の無礼をしようとは思いません」
こんなふうに言って油断をおさせしようとした。
今後の場合のために。
こうした深刻な関係でなくても、
これに類したあぶない逢瀬《おうせ》を作る恋人たちは
別れが苦しいものであるから、まして源氏にここは離れがたい。
夜が明けてしまったので
王命婦と弁とが源氏の退去をいろいろに言って頼んだ。
宮様は半ば死んだようになっておいでになるのである。
「恥知らずの男がまだ生きているかと
お思われしたくありませんから、
私はもうそのうち死ぬでしょう。
そしたらまた死んだ魂が
この世に執着を持つことで罰せられるのでしょう」
恐ろしい気がするほど源氏は真剣になっていた。
🌸🎼 とどまる哀しみ music by Ryota Yamada🌸
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