これだけでも召し上がるようにと思って、
女房たちが持って来たお菓子の台がある、
そのほかにも
箱の蓋などに感じよく調理された物が積まれてあるが、
宮はそれらにお気がないようなふうで、
物思いの多い様子をして
静かに一所をながめておいでになるのがお美しかった。
髪の質、頭の形、髪のかかりぎわなどの美しさは
西の対の姫君とそっくりであった。
よく似たことなどを近ごろは初めほど感ぜずにいた源氏は、
今さらのように驚くべく酷似した二女性であると思って、
苦しい片恋のやり場所を自分は持っているのだという気が少しした。
高雅な所も別人とは思えないのであるが、
初恋の宮は思いなしか一段すぐれたものに見えた。
華麗な気の放たれることは
昔にましたお姿であると思った源氏は前後も忘却して、
そっと静かに帳台へ伝って行き、
宮のお召し物の褄《つま》先を手で引いた。
源氏の服の薫香《くんこう》の香《か》がさっと立って、
宮は様子をお悟りになった。
🌸🎼 追憶🌸 music by しゃろう
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