御|恢復《かいふく》になったものらしいと言って、
兵部卿の宮もお帰りになり、
お居間の人数が少なくなった。
平生からごく親しくお使いになる人は多くなかったので、
そうした人たちだけが、
そこここの几帳《きちょう》の後ろや
襖子《からかみ》の蔭などに侍していた。
命婦などは、
「どう工夫して大将さんをそっと出してお帰ししましょう。
またそばへおいでになると
今夜も御病気におなりあそばすでしょうから、
宮様がお気の毒ですよ」
などとささやいていた。
源氏は塗籠の戸を初めから
細目にあけてあった所へ手をかけて、
そっとあけてから、
屏風《びょうぶ》と壁の間を伝って 宮のお近くへ出て来た。
存じのない宮のお横顔を蔭からよく見ることのできる喜びに
源氏は胸をおどらせ涙も流しているのである。
「まだ私は苦しい。死ぬのではないかしら」
とも言って外のほうをながめておいでになる横顔が
非常に艶《えん》である。
🌸🎼 灰の扉 written by のる
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