夜がふけてから東宮はお帰りになった。
還啓に供奉《ぐぶ》する公卿の多さは
行幸にも劣らぬものだった。
御秘蔵子の東宮のお帰りになったのちの院の御心は
最もお悲しかった。
皇太后もおいでになるはずであったが、
中宮がずっと院に添っておいでになる点が御不満で、
躊躇《ちゅうちょ》あそばされたうちに院は崩御になった。
御仁慈の深い君にお別れして
どんなに多数の人が悲しんだかしれない。
院の御位《みくらい》にお変わりあそばしただけで、
政治はすべて思召しどおりに行なわれていたのであるから、
今の帝はまだお若くて外戚の大臣が人格者でもなかったから、
その人に政権を握られる日になれば、
どんな世の中が現出するであろうと
官吏たちは悲観しているのである。
院が最もお愛しになった中宮や源氏の君は
まして悲しみの中におぼれておいでになった。
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