google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

不気味な院に赴いた源氏【源氏物語 43 第4帖 夕顔9】夕顔は不安がる。二人で朝を迎えて 荒れた庭を眺める。怯える女君を愛おしく思う

呼び出した院の預かり役の出て来るまで留めてある車から、

忍ぶ草の生い茂った門の廂《ひさし》が見上げられた。

たくさんにある大木が暗さを作っているのである。

霧も深く降っていて空気の湿っぽいのに

車の簾《すだれ》を上げさせてあったから源氏の袖も

そのうちべったりと濡れてしまった。

 

「私にははじめての経験だが妙に不安なものだ。

『いにしへも かくやは人の 惑ひけん

 わがまだしらぬ しののめの道』

  前にこんなことがありましたか」

 と聞かれて女は恥ずかしそうだった。

『山の端《は》の 心も知らず 行く月は

 上《うは》の空にて 影や消えなん』

  心細うございます、私は」

凄《すご》さに女がおびえてもいるように見えるのを、

源氏はあの小さい家におおぜい住んでいた人なのだから

道理であると思っておかしかった。

 

門内へ車を入れさせて、西の対《たい》に仕度をさせている間、

高欄に車の柄を引っかけて源氏らは庭にいた。

右近は艶《えん》な情趣を味わいながら

女主人の過去の恋愛時代のある場面なども思い出されるのであった。

 

預かり役がみずから出てする客人の扱いが

丁寧きわまるものであることから、

右近にはこの風流男の何者であるかがわかった。

物の形がほのぼの見えるころに家へはいった。

にわかな仕度ではあったが体裁よく座敷がこしらえてあった。

「だれというほどの人がお供しておらないなどとは、どうもいやはや」

などといって預かり役は

始終出入りする源氏の下家司《しもけいし》でもあったから、

座敷の近くへ来て右近に、

「御家司をどなたかお呼び寄せしたものでございましょうか」

と取り次がせた。

「わざわざだれにもわからない場所にここを選んだのだから、

おまえ以外の者にはすべて秘密にしておいてくれ」

と源氏は口留めをした。

 

さっそくに調えられた粥《かゆ》などが出た。

給仕も食器も間に合わせを忍ぶよりほかはない。

こんな経験を持たぬ源氏は、

一切を切り放して気にかけぬこととして、

恋人とはばからず語り合う愉楽に酔おうとした。

源氏は昼ごろに起きて格子を自身で上げた。

非常に荒れていて、

人影などは見えずにはるばると遠くまでが見渡される。

向こうのほうの木立ちは気味悪く古い大木に皆なっていた。

近い植え込みの草や灌木《かんぼく》などには美しい姿もない。

秋の荒野の景色になっている。

池も水草でうずめられた凄《すご》いものである。

 

別れた棟《むね》のほうに部屋などを持って

預かり役は住むらしいが、

そこと こことはよほど離れている。

「気味悪い家になっている。

 でも鬼なんかだって私だけはどうともしなかろう」

と源氏は言った。

まだこの時までは顔を隠していたが、

この態度を女が恨めしがっているのを知って、

こう何たる錯誤だ、不都合なのは自分である、

こんなに愛していながらと気がついた。

🪷ぜひこちらもご覧ください↓

少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷

https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷

💠少納言チャンネルは、聴く古典として動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷